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2023年度第4回坊っちゃん講座「建物はなぜそのようなかたちをしているか?」開催報告

6月24日(土)に2023年度第4回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、160名を超える参加がありました。

 

本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しております。

 

今回は、本学工学部 建築学科 熊谷亮平 准教授に講演いただきました。熊谷先生のご専門は建築構法です。学部時代は東京都立大学、大学院は東京大学にて博士課程まで在籍され、博士課程在学中にはスペインのバルセロナに2年間留学されていました。もともと理系分野が得意でしたが、人文系にも非常に興味があったことから、理系の中でも建築学に惹かれていったこと、自身がやっていて楽しいと思えないようでは長く続かないという考えにより、好きなことを趣味のように学んだり研究したりしていったこと、当時高校ではあまり学ばないようなことを大学で初めて学び、今までにない世界の見え方をしたことで建築学に没入していったことなど、ご自身の経験されてきたこと等を自己紹介としてお話しくださいました。

 

熊谷先生の専門である「建築構法」は「構法」と「工法」を合わせて建築の構工法と言ったりもしますが、建築の構成やしくみ、造り方を総体した学問分野であり、建築をつくる上で重要な分野であると考えます。日本の伝統的な和室は、軸組工法において柱、敷居、鴨井でできた枠組みの間を戸がスライドするという、世界的に見ればユニークな日本のシステムです。また、柱、敷居、鴨井は大工が、戸は建具屋がつくり、現場ではめ込むだけという手法が昔から行われていることや、ふすま、障子の寸法のルールがあること等、建築をつくる上でのルールや日本の建築の面白さが紹介されました。

 

では、建物は何からできているのか。いろいろな素材がありますが、代表的なものでは日本では木材、ヨーロッパでは石材やレンガ、近代以降に鉄材、20世紀にコンクリートやガラスなども使われるようになりました。古典的な建築のパルテノン神殿は、石やレンガを積み重ねた組積造でありますが、屋根の部分には木も使われています。石造りの建物でも屋根や床を支える梁などには木や(後に)鉄が使われていました。一方で、中世ヨーロッパでは石をアーチ状に積み上げることで、安定した構造の屋根をつくっていました。

 

西洋においては組積造が主であるため壁をつくることが重要となるのに対し、日本では主に木造であり高温多湿の気候であることから、屋根をどのようにつくるのかということが重要になります。唐招提寺金堂の屋根の構造や蓮華王院本堂(三十三間堂)のつくり、成巽閣の屋根は桔木(はねぎ)という部材により縁側上部に張り出した屋根を支えていることなどについて説明がありました。

イタリアローマのパンテオンは石造りに見えて実はコンクリートでできていることや、鉄筋コンクリート構造によりキャンティレバーという張出し床をつくることが可能となったことなど、建物の造り方が変わると形も変わってくることについての説明もなされました。

 

続いて後半は、街並みをつくる多くのふつうの建物を見ていきます。藁葺き・茅葺き屋根は隙間から水が入りやすいため、何重にも重ねて厚みを出し、急勾配にします。杮(こけら)葺きや本瓦葺、桟瓦葺の雨侵入を防ぐための工夫、さらには瓦棒葺・たてはぜ葺では接合部分(はぜ)を高い位置にすることで、より雨が入りにくくなりました。雨仕舞性能が良くなったことで屋根勾配も緩くできるようになりました。

 

外壁の時代性として、れんがの小口積みやタイル張り、板壁等の説明があり、板壁は全く防火性能がなかったが、戦後は都市の不燃化を実現するためにラスモルタル塗仕上げという外壁が戸建て住宅で普及していったこと、さらに現在では、材料性能の向上により雨仕舞を行う方向に移り変わっています。

日本と海外、それぞれその地域の環境に応じる形で、様々な工夫が施されている例を、写真を提示しながら大変分かりやすくご説明いただきました。

 

講演後の質疑応答では20件を超える質問に、講師が最後まで1つ1つ丁寧に回答してくださいました。

 

参加者からは、「具体的な力学などの計算は無かったものの、過去から現代にかけて造られた建物の屋根や壁について知り、以前は気にもしていなかった建造物の工夫に気づくことができました。また、日本での屋根のつくりの変遷を見て、一口に板葺きや瓦屋根と言ってもその裏には沢山の工夫があることに気づかされました。」「今まであまり興味がなかったが、建築はとても面白いものだと思った。特に雨仕舞いについては、とても面白いと感じた。」「建築が昔から今まで工夫されてより軽快に広くなっていることが分かりました。その上で自分が建築についてのどんな所が好きなのか少し理解を進めることができたと思います。」「自分は今高校三年生で将来建築士になりたいという夢がありこのような機会を通して建築の奥深さを知ることができました。」などの感想が寄せられました。

 

   

 講演の様子

  • 坊っちゃん講座
  • 高校生のためのサイエンスプログラム
  • 算数/数学・授業の達人大賞
  • 理科・授業の達人大賞
  • 発行物
  • 教育DX推進センター
  • 教職教育センター
  • 東京理科大学
  • 宇宙教育プログラム
  • 数学体験館
  • なるほど科学体験館
  • 協賛 東京理科大理窓ビジネス同友会

東京理科大学 理数教育研究センター
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