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2023年度第3回坊っちゃん講座「土はどうして構造物を支えられるのか、その原理と応用」開催報告

6月10日(土)に2023年度第3回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、150名を超える参加者がありました。

 

本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しています。

 

今回は、本学創域理工学部 社会基盤工学科 菊池喜昭 教授に講演いただきました。最初に、自己紹介として菊池先生が中学生で星に興味を持ったこと、高校生の時は天文学、気象学に興味があり、気象の研究をしたいと大学に入ったところ、理学と工学の違いに気づき、実務への応用ができる「工学」に目が向き、土木工学がおもしろそうだと研究に進んだとお話がありました。

 

菊池先生の所属する社会基盤工学科では、社会基盤施設の計画、設計、維持管理に責任を持つ学問をやっていて、ダム、貯水場から各家庭にパイプをつないでいる上下水道、鉄道、トンネル、空港の構造物をつくる、河川が氾濫しないよう整備する、まちづくり(計画学)を勉強することもやっている。社会で人々が毎日、当たり前のように使っているものを造っているのが、社会基盤工学(土木工学)だと言えると紹介がありました。

 

講演は、土(地盤)とは何か?から始まり、地盤工学でいう土(地盤)は、土粒子+水+空気の集合体のことをいい、粒子の大きさによって砂、礫(れき)、粘土と呼び名があると紹介があり、その土(地盤)を使った構造物、土木工事の例として、

・野田キャンパス近くの利根運河の斜面は基本的に土だけできている例

・ひび割れが入って壊れている道路(急斜面の道路)を修復した際、コンクリート枠を設けて、斜面に鉄の棒を差し込んで表面付近が壊れないようにしている例

・斜面を切ってできた道路は、コンクリートの壁を造って、斜面にもたれかかるような構造にすることで急斜面が崩れないようにしている例

・野田キャンパス最寄り駅の運河駅からキャンパスまでの歩道では、階段の一部を通路にした際、土を入れると重くなりトラブルが起こる可能性があったことから、地盤材料として発泡スチロールのブロックを入れて人が通れるように対策した例

等、写真を見せながら説明がありました。

 

また、土質力学の基本として、地盤に荷重をかけると地盤が変形し、構造物が沈下し、これ以上荷重がかけられない状態を「地盤の破壊」という。土の破壊基準は数式で表すことができ、破壊基準線に達すると壊れることをグラフや図を使って説明がありました。構造物の設計をする時に、構造物の力は垂直応力しか作用していなく、せん断応力は作用していないが、せん断応力の作用していない面の力を知るために計算する方法の紹介もありました。

 

構造物の基礎をどう設計するかという項目では、代表的な基礎の形式、杭の支持力の考え方を紹介し、構造物が壊れないようにするためには設計に用いる安全率を採用することが必要となること、地盤調査だけでは杭の支持力がわからないことが多いと紹介があり、実物をつかった載荷試験の方法について写真を使って説明がありました。

 

最後に、本日の講演では話さなかった地盤工学の重要な課題として、地盤中には水(地下水)があり、今日の説明は乾燥した地盤を前提に話して、水のある地盤のことは触れなかった。実際には水の問題をクリアしないと安全な構造物は造れない。「雨が降って地盤が緩んでいる」という言い方は土質学的には正しくなく、「雨が降って、地盤中の水圧が普段より高くなっていて、地盤(のせん断強さ)が弱くなっている」ということで、水圧の影響を受ける、液状化も水の影響がある、土の種類の違いによる透水性の違いもある。こういったことからも土質学に興味をもってもらえたらいいと話を締めくくりました。

 

講演後、参加者から届いた20件近くの質問に菊池先生が1つ1つ丁寧に回答してくださいました。

 

参加者からは、「道路、壁なども含め地盤を考えて、設計されているのだと考えさせられた。海の中に設計するときはより複雑なんだろうと感じた。」、「特に地盤について地盤が緩む理由や地盤に杭を刺した時の力の加わり方などが学べて面白かった。計算式など理解しきれない部分もあったが、その点も含めて面白く感じた。」、「後半の話の前提として説明された部分が中2には理解できなかったが、それでも後半を聞いたらそれなりに興味深く聞けた。専門の先生の話を直接聞くことは貴重だと改めて思った。」などの感想が寄せられました。

 

講演後、菊池先生から「お話しさせていただいたのは力学のさわりの部分でしたが,中高生には少し難しかっただろうと思います。しかしながら、少し難しい問題の方がかえって興味を引くかと思い、準備しました。伝わったかどうかが気になるところですが、基本原理がそのまま実務に役立っているということが分ってもらえればと思います」とコメントをいただきました。

 

 

 講演の様子

  • 坊っちゃん講座
  • 高校生のためのサイエンスプログラム
  • 算数/数学・授業の達人大賞
  • 理科・授業の達人大賞
  • 発行物
  • 教育DX推進センター
  • 教職教育センター
  • 東京理科大学
  • 宇宙教育プログラム
  • 数学体験館
  • なるほど科学体験館
  • 協賛 東京理科大理窓ビジネス同友会

東京理科大学 理数教育研究センター
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