最新情報

2023年度第2回坊っちゃん講座「√2が無理数であること」開催報告

5月20日(土)に2023年度第2回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、150名を超える参加がありました。

 

本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しております。

 

今回は、本学理学部第一部 数学科 木田雅成 教授に講演いただきました。本講座は中学生から大学生以上の様々な方が受講くださっていることを踏まえ、あまり数学的基礎知識がなくても、小学校で習う約数、倍数、公倍数と中学校で習う知識で理解できるような講義とすることや、事前に配付した資料を使って講義を進めていくことの説明からスタートしました。板書に代えてiPadに書き込んで解説していくスタイルです。

 

√2が無理数であることを覚えていますか。講義では連分数を使って証明していきます。

第1節「導入・ユークリッドの互除法」ではまず、有理数の概念を思い出します。有理数とは「a/b a,bは整数、b≠0」と表されるもの全てです。有理数で表されない数が無理数となり、代表的なものが√2。高校1年生の教科書では√2が無理数であることを、「背理法」という結論が間違っていると仮定して矛盾を導き、結果として結論が正しいことを証明する方法で証明しました。しかし、本講義では、「√2がa/b(整数/整数)と書くことができる数と異なっていると背理法によらない証明を与える」ことを目標とします。

そのための導入として、「ユークリッドの互除法」についての説明がありました。「ユークリッドの互除法」とは最大公約数を求めるアルゴリズムのことであり、因数分解をしなくとも最大公約数を求めることができます。小学校でも習う余りのあるわり算を繰り返してやるのが互除法で、講義の中では最大公約数を互除法を用いて求める解説がなされた後に課題が出されました。演習として参加者が課題に取り組む時間が与えられ、答え合わせが行われました。

 

続いて第2節では「互除法から連分数へ」と題し、第1節で解説された例題を用いて互除法から連分数にしていく方法が説明されました。連分数とは分数に分数が重なったような分数であり、互除法ができてしまえばその商を並べていくことで分数(有理数)を連分数にすることができます。課題1の結果を用いて課題2を解くための時間が与えられ、その後に答え合わせが行われました。

第3節ではこれまで行ったことの逆、「連分数を通常の分数に直すこと(近似分数)」についてのお話がありました。同じく例題を用いて説明があり、既約分数や近似分数の特徴などについて分かりやすく解説がなされました。

第4節では「実数の連分数展開」をテーマとして説明がありました。自然対数の底(e)の連分数展開にはきれいな規則性があるのに対し、πの連分数展開の規則性は発見されていないことやπの近似値として22/7が昔から使われてきたこと等について大変わかりやすく解説されました。

 

第5節では「√2の連分数展開」と題し、√2も実数であることから連分数展開が可能であり、電卓を使用せず正確な連分数を求めることができると、実際にその方法について解説がありました。

第4節までに見てきた内容から、有理数は有限連分数に展開でき、有限連分数は分数に戻すことができるとわかりました。もし√2が有理数だったら有限連分数となるはずですが、√2の連分数展開は無限に続くので有理数ではない。したがって√2は無理数であるとの結論が得られ、本日の目標が達せられました。

さらに、ラグランジュの定理や循環連分数についての解説もあり、最後には参考文献としての「『連分数』, 近代科学社, 木田雅成著」について、高校生でもわかるような基礎的内容も書かれていることからぜひ手にしてくださいと紹介がありました。

 

講演後の質疑応答では「Q&A機能」により多くの質問が寄せられ、講師より1つ1つ丁寧に回答いただきました。講演終了の時間を迎え中締めとしましたが、引き続き参加してくださっている参加者に向けて、最後の質問まで丁寧に回答いただきました。

 

参加者からは、「導入がしっかりしていて内容が理解しやすかった。」「筋道立てて、中学生でも分かりやすく、丁寧な式の説明がよかった。」「高校ではまだ習わない数学を知ることができたので数学に対する興味を深めることが出来ました。」「練習問題を間に挟んでもらったので理解がしやすかった。」「学校で習った背理法以外にも√2が無理数であることを今まで持っていた知識で証明できることを知ることができてよかった。」「連分数展開、そして特に近似分数という概念について学べたことがとてもうれしかった。今後、自分の数学の知見をもっと広げていきたいと思った。」などの感想が寄せられました。

 

  

講演の様子

  • 坊っちゃん講座
  • 高校生のためのサイエンスプログラム
  • 発行物
  • 教育DX推進センター
  • 教職教育センター
  • 東京理科大学
  • 宇宙教育プログラム
  • 数学体験館
  • なるほど科学体験館
  • 理科・授業の達人大賞
  • 算数/数学・授業の達人大賞

東京理科大学 理数教育研究センター
(事務局:学務部学務課)

〒162-8601 東京都新宿区神楽坂1-3
TEL:03-5228-7329 FAX:03-5228-7330