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2023年度第11回坊っちゃん講座「漢方薬の科学〜漢方薬にはノーベル賞テクノロジー?」開催報告

1月27日(土)に2023年度第11回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、160名を超える参加者がありました。

 

本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しています。

 

今回は、本学薬学部 薬学科 礒濱洋一郎 教授にご講演いただきました。初めに自己紹介で、子どものころテレビで「鉄腕アトム」や「マジンガーZ」をみて科学者になって人類を救おうと考えていたことや、野口英世の伝記を読み、人類を救うために医者になろうと夢を変えたこと。高校ではバスケットボールやギターばかりやっていて成績が振るわず、医学部進学を目指していたが熊本大学薬学部へ入学することになったこと。薬学部に入学したことでやる気が起きずなんとなく過ごしていた頃に、恩師の言葉から実験研究の面白さに気付き、人類を救うためには医学部でなくてもできると寝食を忘れて実験に夢中になっていったこと。現在は呼吸器疾患の治療に用いる新しい薬の開発や漢方薬の新たな使い方を提案する研究を続けていることなどのお話がありました。

 

薬には、病気の原因を取り除く「原因療法(根本治療)」の薬、痛みなど病気の症状を和らげる「対処療法」の薬があります。そもそもなぜ病気になるのかというお話から、薬学とは「どんな化学物質を」「どれくらいの量で」「どの場所に」「どんなタイミングで」使えば良いのかを考える学問であり、東京理科大学薬学部の場合には、薬を使うプロである薬剤師を育てる薬学科、薬をつくるプロを育てる生命創薬科学科があること。医療・保健行政職や医薬品の営業職、麻薬捜査官や科学捜査研究員などの正義を守る職業など、薬に携わる多種多様な業種に就職する人達もいることなどの説明がありました。

 

続いては、礒濱先生の研究テーマである「漢方薬はなぜ効くのか」についてです。漢方薬はいくつかの薬用植物(生薬)を混ぜてつくるものであり、現在ではほとんどの医師が漢方薬を処方しています。漢方の診察では「気・血・水」の巡りが悪いと症状(痛み)が出てくると考えます。

「麻黄湯」がインフルエンザウイルス増殖を抑制する作用について、西洋医学の「オセルタミビル」と比較しても、「麻黄湯」は抗インフルエンザ効果の作用点が複数になることから有効性が増し、耐性を生じにくいと言われていることなど、詳細にわかりやすく解説されました。

また、漢方薬は複数の生薬(成分)が混ざり合って大きな作用を生むことの例として、芍薬甘草湯の芍薬と甘草をマウスに投与する実験の解説がなされました。

さらに、五苓散の受容体はアクアポリンであることについて様々な実験データを用いて解説され、五苓散が脳浮腫の治療薬として新たな可能性があることについてのお話がありました。

近年になって解明されてきたその他の漢方薬の作用点として、大建中湯や六君子湯についての解説もなされ、まとめとして、漢方薬は「混ざっているところがいい!」という側面があり、さらには「西洋薬に未だ利用されていない受容体を持っている」ということが分かってきたのだと述べられました。最後に、1800年前にできた漢方薬に実は21世紀のノーベル賞テクノロジーがすでに応用されている。漢方薬の作用をもっと調べていくとそこからノーベル賞のネタになるものが見つかるのではないかと夢見ながら、研究室のメンバーと日夜研究にいそしんでいると話され、講演が締めくくられました。

 

ご講演後、参加者から届いた30件以上の質問に礒濱先生が1つ1つ丁寧に回答してくださいました。

 

参加者からは、「とても興味深い内容で、進路の参考にすることができました。」「漢方薬の奥深さを益々感じ、私は薬学部に進学して、もっとたくさんのことを研究したいと思いました。」「以前から漢方に興味はあったのですが、より興味を持ちました。自分は理科大の薬学部志望なので、今回の講座に参加して勉強を頑張ろうという気持ちにもなりました。先生のわかりやすくて面白い話を聞いてとても楽しかったです。」「漢方薬がどのように働くのかというお話を、化学や生物の面からも垣間見ることができて、大変興味深く学びになりました。」などの感想が寄せられました。

 

 

講演の様子

  

 

 

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