2023年度第10回坊っちゃん講座「アメーバの健康診断アプリを開発する」開催報告
12月16日(土)に2023年度第10回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、100名を超える参加者がありました。
本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しています。
今回は、本学理学部第一部化学科を卒業し、博士の学位を取得時に理窓博士会学術奨励賞を受賞された深谷将 先生(公立諏訪東京理科大学 工学部 情報応用工学科 助教)に講演いただきました。最初に先生が所属されている公立諏訪東京理科大学について、東京理科大学の連携校であること、諏訪地域の6市町村が合同で運営しているため校名に「公立」と付いていること。長野県茅野市の山に位置し、日本の大学の中で1、2を争う標高であり、八ヶ岳が見渡せ、近くには大きな諏訪湖もあることから、自然豊かで勉強したり自然科学の研究をしたりするにはとても良い環境であるとお話がありました。
深谷先生は研究に役立つアプリの開発の研究、中でも情報工学と生物学にまたがる研究をされています。
生物は多くの情報を持ちますが、生物の情報を測ることを研究にするためには何か新規性を見出す必要がある。そのため誰も行っていないであろうアメーバの健康を測ろうと考えられたそうです。新しいアプリを開発して、健康なアメーバとそうでないアメーバを測定し、その違いを分析することで、アメーバの健康の違いを解明する研究を行っていると説明がありました。
アメーバと言っても2,000種類以上が分類されていますが、今回はその中のアカントアメーバを取り扱います。アカントアメーバは非常に小さい単細胞生物ですが、自分自身で動くことができ、他のより小さな生物を食べ、細胞分裂によって増えます。そのアメーバがウイルスに感染すると形や動きに変化が現れることを、実際の動画を見ながら非常にわかりやすくご説明いただきました。しかし、深谷先生の研究はウイルスに感染してしまったアメーバを助けるものではなく、変化したアメーバを測定することにより、新しいウイルスの性質を調べることが目的となります。
ここまで「生物を測る」、「アメーバの健康」についてお話しされてきましたが、「測定アプリの開発」と題して、画像データを解析するためにどのようなプログラムを作り計測していくのかなど、とても分かりやすい説明がありました。「測定結果の分析」として、健康アメーバと感染アメーバをプログラムが測定した結果を見ると、ウイルスに感染したアメーバは約1日後には数が増えることなく、小さく(丸く)変化し、動かなくなることがわかりました。
このように情報工学の分野で得られた様々な情報をここから先は生物学の分野に共有し、研究が続けられていくのだと解説されました。
「アプリ開発の研究について」では、深谷先生の経歴についてお話がありました。高校、大学時代は化学分野を学び、大学卒業後は大学院に進むことなくプログラマーとして会社員を経験した後、フリーランスのシステムエンジニアとなられたそうです。「余談ですが」と前置きがあった上で、「情報分野の研究者になりたい、アプリ開発者になりたいと思う方の中に言語選択を迷っている方がいるとすれば、どれでも良いからまずは一つの言語をマスターすることをお勧めします。一つマスターすれば他に移るのは容易なので。」というアドバイスがありました。また、フリーランスの時代に喫茶店の経営も行っていたそうですが、その後東京理科大学大学院 理学研究科科学教育専攻に進学し、巨大ウイルスを取り扱う研究室に所属され、大学院修了後、東京理科大学で研究員をした後に公立諏訪東京理科大学に就職されました。
最後にアプリ開発の研究をする上で難しかったことや画像解析が研究になると気付いたきっかけについてのお話の他、いろいろな分野の研究を知り、いろいろな分野の人と知り合いになることでアプリを開発する研究者への近道になるかもしれないと考えている。大学は知り合いを増やすチャンスの場であると述べられました。
ご講演後、参加者から届いた多くの質問に深谷先生が1つ1つ丁寧に回答してくださいました。
参加者からは、「難しかったけれど、学校では学べないことが学べて良かったです。」「アプリ開発やプログラミングなどの情報系の研究は具体的にどのような内容があるのか、実際にそのようなことを始めるにはどうした方が良いのかを知ることができ良かったです。」「アメーバがウイルスに感染した時の変化を知ることができて面白かった。」「質問が気軽にできたこと、自分の興味のある範囲について詳しく解説していただけたことがとても良かった。」などの感想が寄せられました。
講演の様子