2022年度研究会「思考力を育む」を開催しました!
12月11日(日)に理数教育研究センター主催研究会「思考力を育む」をオンラインで開催しました。
本研究会は、日本の理数力強化に資するべく、中学・高等学校の現職理数教員、教員を目指す学生、教員養成を担当される方や大学教員を主な対象として開催する合同研修で、全国から130人を超える参加がありました。
まず、浅沼 茂 東京福祉大学 特任教授から「思考力のカリキュラムの実践」について、新学習指導要領における思考力の目標についての実践的探究として、中学校数学の図形の単元での実践例を紹介しました。つまようじを電気糊で貼り合わせて正多面体をつくる授業では、教師が教えるのではなく、生徒たち自ら「発見」する授業であり、教えないという方法が重要だとお話がありました。
続いて、松原憲治 国立教育政策研究所 総括研究官から「思考力の育成とSSH等における探究活動」について、SSHや新科目「理数探究基礎」や「理数探究」について確認をした後にSSH校である愛知県立一宮高等学校の実践例として、紙コップに熱湯を注ぐとコップの下の机面が曇る原因を解明する探究活動の紹介がありました。また、国立教育政策研究所で実施した高校生の科学の本質に関する認識についての調査研究結果についてもお話がありました。
3人目の講演者は、柴田祥彦 東京都立三鷹中等教育学校 指導教諭から「地理総合で育む思考力」について、地理総合の授業で実践している例をあげて、平野部では地下水の過剰揚水で地盤沈下が発生するという事実を“問い”に変換することで、どうして地盤沈下の原因が地下水だとわかったのだろうか?と投げかけ、地理院地図ツールやグーグルアースを活用する例も紹介がありました。また柴田先生は地理教材共有サイトを作成し教材の無料共有やオンラインセミナーを開催し、良き地理授業の普及を目指していることの紹介もありました。
その後、前田智大 株式会社Mined代表取締役から「子どもたちの思考力を奪う方法」と題し、ベンチャー企業を立ち上げ、小中学生向けライブオンライン授業のプラットフォームの運営している中で、取り組んでいる事例の紹介がありました。オンラインで先生と生徒(児童)をつなぐことで、コンテンツが増え、受講希望者が増えることを目指して実践しているとお話がありました。
最後に、秋山 仁 本学栄誉教授から「培いたい思考力とは?」について、定義するとすれば、思考力≒問題発見能力+問題解決能力なのかと講演が始まり、思考力を育む教育は、疑問や不思議に思う感性を持つことで、真の思考力とは、新たなものを産み出す力であるとお話がありました。最後に本学数学体験館の教具を使った「三平方の定理」を見せ、生徒の興味を掴む一例として紹介しました。
休憩後、パネルディスカッションでは、参加者から寄せられた数々の質問を取り入れ、思考力を育む教育に必要なことについて議論しました。
参加者からは、
・高等学校における探究について、考える機会を得ることができました。新しいことが入ってきたというより、探究を楽しむこと(本来、教員はそれぞれの教科の探究を楽しんでいたはずで)が大切であり、教師が楽しまないと生徒も楽しめないと、改めて思いました。などの感想が寄せられました。
・様々な立場(理論、施策、現場の教員、オンライン塾、研究者)で思考力を持った次世代を育てたいと真摯に取り組んでおられる方々から、メリハリのあるお話を伺うことができ、勉強になった。優秀な人材を抜擢して育てるだけでなく、思考力を持った普通の市民を育てることが、いま求められていると思います。
・探究活動についてのヒントを得られた点、今回は柴田さんや前田さんのように理数系に限定されない内容だったので良かったと思います。最近は教科横断型授業なども話にでますが、地理(社会)と物理のコラボも可能なのだと感じました。
などの感想が寄せられました。
浅沼 茂 氏 松原憲治 氏
柴田祥彦 氏 前田智大 氏
秋山 仁 栄誉教授 パネルディスカッションの様子