2022年度第8回坊っちゃん講座「ギリシア・ローマの建築の教え」開催報告
10月29日(土)に坊っちゃん講座をオンラインで開催し、100名を超える参加がありました。
本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しております。
今回は、山名先生が出張先のベトナム・ホーチミンから発信し、日本全国の参加者が聴衆するというオンラインならでは講演となりました。
自己紹介では、建築設計から建築史へと研究分野を変遷するフランスでの出会いから、その後、建築家のル・コルビュジエの建築作品(国立西洋美術館)の世界文化遺産登録への立役者となる興味深い話がありました。
続いて、講義内容は、中身が凝縮された12のテーマで行われました。
①なぜ、西洋建築史を学ぶのか? ②西洋建築と様式:様式とは何か ③西洋建築史/ヨーロッパ建築史 ④アクロポリスの丘、パルテノン ⑤古典系建築の流れ:≪オーダー ORDER≫ ⑥記録、発見、継承、発掘、再発見されるギリシア ⑦古代ローマ建築を代表する三つ ⑧ルネサンス建築 ⑨マニエリスム建築 ⑩バロック建築 ⑪新古典主義建築 ⑫歴史主義建築
最初に「建築」という日本語は、当初「造家」と訳され、1894年、建築家、建築史家の伊東忠太が、「造家」では芸術的な意味合いが抜けているので「建築」と訳すべきと提唱し、その後、「造家学会」が「建築学会」となり、東京帝国大学工科大学の「造家学科」が「建築学科」となった話から始まり、「建築」という言葉は、アジアの漢字圏の国でも使われるようになりました。
西洋建築史では、ヨーロッパの二つの文化のルーツ、二つの要素が交互に優勢になった歴史について、古代ギリシア・ローマ的(クラッシック的)、ラテン的要素はイタリアを中心とするアルプス以南で、古代はもちろん、ルネッサンス以降は優勢であり、キリスト教的、ゲルマン的要素はイギリス、ドイツを中心とするアルプス以北で、中世において優勢であり、フランスは双方に関わるとの説明がありました。
ギリシアとローマの建築の教えでは、古典系建築の基本単位である「オーダー」の重要性について、定型化された柱の構成を規定する建築の文法であり、柱と梁など部材相互の秩序ある組み合わせのことであるとの説明があり、古代ギリシアの3つのオーダー(ドリス式、イオニア式、コリント式)から古代ローマでは新たに2つのオーダー(トスカナ式とコンポジット式)が加わり、美の継承が行われました。
講演は、写真や資料をふんだんに使い、簡潔でわかりやすい説明により、西洋建築史を巡るストーリーは、あっという間に終了しました。
その後、参加者から「Q&A機能」を用いて質問を受け、質問を1つ1つ丁寧に、回答していただきました。
参加者からは、「中学生の時に美術で習った、建築様式や建物と、高校生になってからの歴史総合で習っている歴史の内容とが結びついて、こんなところに関わりがあったのだと知れて良かった。また、美術史の中で見たことがあった、歴史で登場する物を、建築の歴史という新しい視点で見ることが出来たのは良かった。」「私は建築意匠や都市計画に興味があり今日の講座を受講しました。ル・コルビュジエのような人も歴史的な系譜を理解した上で建築設計を行っていることに改めて気づき、私も建築を学ぶにあたりまずは建築の歴史をしっかり理解したいと思いました。」「美しい建物を見る時に、建築史を知っているか知らないかで大きく異なると思い、異なる視点で勉強してみようかと思いました。」などの感想が寄せられました。
オンライン講座の様子