創域理工学部

Faculty of Science and Technology

「創域」のポイント

数理科学科*

Department of Mathematics

「創域」するしくみ

「ダブルラボ」制度

数理科学科では、純粋数学を探究する「数学系」と、応用数学を探究する「先端数理系」の2つの系に分かれた教育を行っています。先端数理系では、「ダブルラボ」という独自の教育プログラムを実施。4年次の卒業研究と並行して、他学科の研究室と共同で、数学の理工学諸分野への応用に関する研究を行います。

横断型・資格教職コースの強化

数学教員を目指す学生に向け、大学院での「横断型・資格教育コース」をさらに強化します。理工学研究科で教員養成を行う複数の専攻・学科の教員が、教職を目指す大学院生に分野横断的な指導を行うことで、理工学全体への広い視野を持った数学教員の養成を目指します。

専門コースの新設

2023年度より新たに導入するS方式入試および公募制推薦入試において、入試時点で数学系または先端数理系いずれかを選択し、数理科学専攻の大学院進学を決意している志願者を募集します。入学時より希望する専門のコースで、それぞれの学びを深化させていきます。

「創域」する研究

感染症予防、竜巻や気候変動対策などを支える多様なモデルの数理を究明

確率論における確率微分方程式を、数理ファイナンスや感染症流行モデルに応用したり、渦や竜巻の挙動の研究に、偏微分方程式論における流体方程式や、そこから導出されるモデル方程式が用いられたりと、数学はあらゆるイノベーションの可能性を秘めています。本学科では、数学理論や数学的オブジェクトを理工学分野に応用することで、環境や気象を意識した問題など、現代社会を取り巻くさまざまな課題の数理的解明とその応用を目指しています。

感染症予防、竜巻や気候変動対策などを支える多様なモデルの数理を究明

先端物理学科*

Department of Physics and Astronomy

「創域」するしくみ

「プレ卒研ゼミ」を開講

先端物理学科は、2023年度から6年一貫教育コースを導入します。それを見据えて、2022年度入学生より、演習科目の強化を含む基礎科目の配置の見直しを行い、3年次に「プレ卒研ゼミ」を新規に開講します。通常、卒業研究に係る研究室の配属は4年次からですが、意欲ある学生の研究室への先行配属を促進し、大学院まで継続的に研究に専念できる環境を整備します。

学科内でコース制を設置

6年一貫教育コースの導入に伴い、3年次に学科内でコース制を設置する予定です。素粒子・宇宙コース、物性コース、光物理学コースなど、物理学における専門性を意識したコース教育の導入により、理学の深い専門知識と応用力を兼ね備え、未踏の領域にも挑むことのできる実力のある研究者、技術者、教育者を育成するのがねらいです。

「創域」する研究

X線用CMOSセンサーの開発で新領域を切り拓く

幸村研究室 | 幸村 孝由 教授

幸村研究室では、天体が放射するX線を測定するセンサー「SOIPIX」を国内の大学、研究所、企業と共同で開発し、Silicon-On-Insulator (SOI)積層ウエハー技術を用いて、X線を検出するセンサー部と、読み出しするCMOS回路を3次元的に一体化させる技術を確立しました。この技術は天体のX線の測定だけでなく、食品の異物検出や電子部品の欠陥検出などの非破壊検査に適したX線ラインセンサカメラにも利用されるなど、さまざまな用途に役立てられています。

天体が放射するX線を測定するための目となるセンサー

天体が放射するX線を測定するための目となるセンサーは、実は社会生活でも役立ちます。

ブラウン運動の基礎理論からイノベーションへ

秋元研究室 | 秋元 琢磨 准教授

水の中に微粒子(水分子よりははるかに大きいが顕微鏡で大きさがわかる程度の粒子)を浮かべると、ジグザグとしたランダムな動きを示します。この運動は、ブラウン運動と呼ばれています。アインシュタインは、この運動の起源は水分子の熱運動であると考え、ミクロとマクロをつなげる理論を構築しました(1905年)。

ブラウン運動の基礎研究は、確率過程という新しい数学の分野を切り開き、物理だけではなく、化学、生物学、そして、金融工学などのさまざまな自然・経済現象へ応用されています。例えば、ブラウン運動を拡張したモデルは、オプション価格の評価に用いられています(ブラック-ショールズ方程式)。このように、物理や数学の基礎理論は、さまざまな分野に影響を与える可能性を持っています。

秋元研究室では、ブラウン運動を拡張した確率モデルの数理的な構造を解明することを目標にしています。特に、レーザー冷却における運動量の時間発展や細胞内における分子の拡散現象などの現象への応用を目指しています。これらの過程は非定常な振る舞いを示し、その基礎理論がまだ完全には構築されていません。将来、非定常過程の基礎理論を完成させ、物理現象だけでなく、さまざまな自然及び社会現象へ応用し、新たな分野の創発を目指します。

ブラウン運動のいくつかの軌跡

ブラウン運動のいくつかの軌跡

暗触媒活性を示す窒化炭素化合物の開発

金井研究室 | 金井 要 教授

光触媒とは、光のエネルギーにより水や有機物を分解することができる材料、またはその機能のことを指します。光のみで水を分解し、まったく炭素を放出することなく、水素を生成することができます。

昨今、水素は次世代エネルギーとして注目されており、光触媒を用いた水素収集効率の向上の研究が精力的に進められています。金井研究室では、窒化炭素系光触媒の1つであるPoly(heptazine imide 以下、PHI) の開発を実施。PHIとは、通常の光触媒活性のほかに、光照射時に蓄えた光エネルギーを使用して、暗条件下でも水素収集量を持続化・安定化できる「暗触媒活性」と呼ばれる画期的な機能を示します(図1)。さらに、図2に示したように、PHIは黄色の物質であることから、可視光を利用して、光触媒・暗触媒活性を示すことができる利点も持ちます。

光触媒・暗触媒活性の概念図

図1. 光触媒・暗触媒活性の概念図。図中に示したPHIの構造中には、実際には重合反応の際に取り込まれたK+が含まれている。

PHIと代表的な窒化炭素化合物であるg-CN(melon)の粉末試料の写真と、紫外可視吸収スペクトル

図2. PHIと代表的な窒化炭素化合物であるg-CN(melon)の粉末試料の写真と、紫外可視吸収スペクトル。PHIは、g-CNより長波長の光を吸収することがわかる。

鮮やかな色の昆虫が持つフォトニック結晶

吉岡研究室 | 吉岡 伸也 教授

フォトニック結晶とは、光の波長サイズで周期的な構造を持つ材料であり、光の伝搬を制御する光学素子としての応用が期待されています。しかし、微細な三次元構造を人工的に製作することは、最新の加工技術をもってしても簡単ではありません。

一方、昆虫の中には、そのような構造を細胞内部で作り出し、鮮やかな色を生み出すのに利用している種類がいます。吉岡研究室では、そのような生物が持つ微細な構造とその光学特性について研究しています。図1はアフリカに生息するカミキリムシの一種で、鞘翅の上にある小さな鱗片が鮮やかな緑を生み出しています(図2)。鱗片の内部を電子顕微鏡で観察すると、クチクラで形成された複雑な網目構造が存在し、その構造はI-WP型と呼ばれる極小曲面に基づいたネットワークであることがわかりました(図3)。細胞の中でこのような構造が作られる仕組みが明らかになれば、簡単かつ効率的にフォトニック結晶構造が作れるようになることが期待されます。

ホウセキカミキリの一種

図1. ホウセキカミキリの一種(Sternotomis callais)

鞘翅の光学顕微鏡写真

図2. 鞘翅の光学顕微鏡写真 白線は50μm.

鱗片断面の電子顕微鏡写真

図3. 鱗片断面の電子顕微鏡写真。白線は1μm.

情報計算科学科*

Department of Information Sciences

「創域」するしくみ

6年一貫教育コース

情報計算科学科の6年一貫教育コースは、2年次から3年次への進級時にコース所属を選択します(2年次までの成績上位者20%を対象)。通常は3年次後期に研究室に仮配属されますが、先立って研究室に配属することにより、専門性をより高めることができます。また、大学院科目の先行履修、横断型コースへの参加、海外への留学など、学生の将来の目標に沿った選択が可能です。

自由度の高いプログラミング科目群

情報計算科学科のプログラミング科目の中には、作成する内容を学生自身で決める科目がいくつか用意されています。その中でも特に3年次後期に実施される「プロジェクト実験」では、5~8人がグループを編成してチームプログラミングにより中規模のシステムを開発します。最新の機械学習を用いたラジコンカーの自動運転システムや、ドローンの自動衝突防止システム、複雑なアルゴリズムを採用した避難経路探索システム、VRを用いた大学案内システムなど、プロジェクト実験の発表会ではバラエティに富んだレベルの高いシステムが毎年報告されています。

基礎力と実践力を高めるための演習科目群

情報計算科学科は最新の理論や技術を理解し、新たな価値を創出するための基礎力を学生に身に付けさせるために数学系の科目を充実させています。大学数学はレベルが高いため消化不良になりがちですが、情報計算科学科ではほとんどの数学系科目に演習を併設しています。演習時間を設けることによって、講義だけでは曖昧な理解になりがちな数学を深く理解するカリキュラムを提供しています。

「創域」する研究

次世代ネットワークのインフラ形成と応用を推進

松澤研究室 | 松澤 智史 講師

スマートフォンやタブレット、ノート型パソコンなどの移動端末間を接続して各端末が中継機の役割を果たす次世代ネットワーク、「モバイルアドホックネットワーク(Mobile Ad hoc Network: MANET)」でのデータ配送方式の研究やアプリ開発などを進めています。基地局などの特別な機器を必要とせず、また通信開始時は通信できなくても、端末が動くことにより通信できる可能性が上がるなどの特徴があり、災害時の被災地など通信網が破壊された環境でも情報交換が可能になります。

手元の端末が無線通信中継機器にもなる未来型通信

手元の端末が無線通信中継機器にもなる未来型通信

調音運動を中間情報とする音声合成システム

桂田研究室 | 桂田 浩一 教授

音声合成では、一般的に言語から音声を直接生成します。これに対して、本研究ではrtMRI(real time magnetic resonance imaging)やEMA(Electromagnetic articulography)と呼ばれる専用機器で収録した発声時の唇や舌の動きを中間情報とする音声合成システムを開発します。実際の発声の仕組みを模倣した音声合成法を実現することにより、人間の発声過程のシミュレーションや構音障碍者の支援、語学学習への活用が可能になります。

広域インテリジェントネットワーク構想に基づく広域道路交通制御システム

明石研究室 | 明石 重男 教授

自動車運転免許は、現在最も大規模なデータベースを保持しているといわれていますが、近い将来、顔認証システムと連動させることで、運転手と免許証保持者の一致性を確認し、GPSや高速道路でのオービス等と連動させることが望ましいといえます。これにより、潜在的指名手配犯の自動車利用経路や、違反記録の多いドライバーを対象とする運転不許可という拘束力を、警察庁が保有することが可能となります。

安全性と利便性を両立した認証技術

入山研究室 | 入山 聖史 准教授

指紋や顔の画像などを用いた生体認証技術が普及しつつありますが、生体情報は流出した場合に取り返しがつかないことになりかねません。本技術は秘匿計算をもとにした認証技術であり、個人の秘密情報を保存するサーバーに復号用の鍵を置かず、暗号化したまま情報処理を行います。

さらに、認証に用いる情報はさまざまな種類(パスワード、ICカード、指紋、顔情報等)に対応しており、シングルサインオンにより異なるサービスとの連携も可能です。これにより、安全で利便性の高い認証をクラウドで提供することが可能となります。

飛躍的に効率を高めた鍵配送アルゴリズム

入山研究室 | 入山 聖史 准教授

暗号通信を行う際のマスターキーとなる鍵の配信は最も攻撃にさらされるために、安全とされる鍵長は年々長くなっています。現在の鍵配送アルゴリズムの利用について、2030年問題といわれる限界点が議論されており、安全で効率のよい鍵配送アルゴリズムが求められています。本技術では、従来のものと安全性のクラスを変えることなく、高効率で鍵が配送できる「強非対象公開鍵共有アルゴリズム」を構成し、長い鍵を送る際の計算時間を解決しています。

分子配列変化の数理モデルに基づく系統推定

佐藤研究室 | 佐藤 圭子 准教授

正確な種の特定や分類を行う系統推定は DNAバーコーディングや分子進化の研究において極めて重要です。私たちは、挿入・欠失サイトの進化情報を取り入れた数理モデルをもとに、 進化の過程に沿った系統推定を行うためのWebアプリケーションツール(P*R*O*P)の開発を行っています。

がん分子標的の同定

佐藤研究室 | 佐藤 圭子 准教授

情報論的手法を用いてがん患者の遺伝子発現特性を明らかにし、再発および生存期間に関与する特異的な遺伝子を同定することで、難治性がんの早期発見や分子標的治療の開発に向けての基盤を形成します。

人間の期待感に基づいた情報科学的音楽生成

大村研究室 | 大村 英史 講師

音楽における情動は、人間の期待感に基づいて生じると考えられています。本研究では、情報量にもとづいて音楽的構造を操作することで、人間の興味を引く音楽を生成するシステムの開発を行っています。

生命生物科学科*

Department of Applied Biological Science

「創域」するしくみ

研究室横断プログラム

学部学生の研究参加時期の早期化を見据えた「研究室横断プログラム」制度を導入し,研究開始時期の早期化による専門性を高めた教育・研究を推進します。将来的には、学部1年次後期から研究活動に参加できる制度も検討します。

学内外との連携強化

各研究分野の専門性をさらに深化させつつ、その延長として学内外の関連する研究分野との連携を進めます。理工学部内での医理工学際連携コースや農理工学際連携コースへの参加による、学科の枠を超えた異分野研究領域の創出につなげます。

「創域」する研究

機能性オリゴ糖の大量合成を可能にする酵素を探究

中島研究室 | 中島 将博 准教授

近年、人々の健康志向が高まるなか、特定保健用食品や健康食品として「機能性オリゴ糖」が注目されています。摂取することで善玉菌を増殖させ、腸内環境を改善する可能性のある機能性オリゴ糖の多くは、実用的な化学合成が困難です。中島研究室では、機能性オリゴ糖の大量合成を容易にする「糖質加リン酸分解酵素」やそれに関連する新規酵素の研究を推進。将来的に有用な機能を持った新たなオリゴ糖を合成することを目指しています。

機能性オリゴ糖の大量合成を可能にする酵素を探究

COVID-19関連の研究

COVID-19など呼吸器疾患の解明と治療につながる、繊毛の動きの解析。また治療薬や予防薬の候補分子の探索。

農業・食糧生産関連

植物の病害虫耐性につながる免疫強化を促す化合物や微生物の探索。また、植物のバイオマス増産や生産力強化につながる技術の開発。

医療・美容分野

皮膚構造及び疾患の研究から,医療・美容分野への貢献。

生命・遺伝

栄養環境の記憶が生殖細胞へ刻まれ、次世代へ受け継がれる仕組みの解明。

建築学科

Department of Architecture

「創域」するしくみ

スタジオ制の導入

国際的建築教育に準拠するために、学部4年と修士課程2年の6年間を継続的かつ有機的に学べる「3年+3年」教育のカリキュラムを整備しています。こうした6年制の導入にともない、2021年度より本格的に「スタジオ制」を開始しました。スタジオ制は、各分野の教員が半期に1スタジオを担当して自由にデザイン課題を設定。aからhまで、バラエティ豊かな8つのスタジオから選択できるよう構成されています。学部4年次〜大学院修士の学生が受講でき、自らが属する系にとらわれることなく、自らの専門性を高めるきっかけとして非常に有用です。なおこれは、芸術と工学の融合・連環を目指す、建築学科独自の「デザイン・リサーチラボ構想」とも連動しています。

海外大学との交換留学・学術交流

6年一貫教育コースでは、大学院修士課程で履修する科目(10単位分)を、学部のうちから履修することにより、修士課程1年生で研究に充当できる時間を増やすとともに、在学中に海外留学などの機会を増やすことができます。最近では、海外大学との交換留学・学術交流として、国際的な活動展開に向け、パリ・ベルビル建築学校(フランス)、リール建築大学(フランス)、リスボン工科大学(ポルトガル)、ナンシー建築大学(フランス)と交換留学を含む学術交流を行っており、今後は建築分野で世界的に有名なデルフト工科大学(オランダ)などをはじめアジアや北南米の大学とも交流の幅を広げていく予定です。

「創域」する研究

森林国・日本の強みを生かした防災応用技術を開発

世界中で地球環境問題への関心が高まり、建物への木材利用が注目されていることから、森林国である日本の木材を生かした難燃材の開発や、デジタルファブリケーションを活用した木組み技術の開発などを行っています。また地震国である日本が培ってきた制振技術や免震技術を応用した工法を提案するとともに、既に建てられている中層木造建物に振動モニタリングシステムを導入し、地震時の揺れをリアルタイムで把握する取り組みも行っています。

野田キャンパスに新たに導入された大型構造試験機

野田キャンパスに新たに導入された大型構造試験機。実大の木質構造物の破壊実験を行うことができます。

先端化学科

Department of Pure and Applied Chemistry

「創域」するしくみ

入学時からの6年一貫教育コース早期選択

先端化学科では、大学院修士課程への高い進学率を背景に、6年一貫教育コースを他の学科に先駆けて導入しています。創域理工学部および創域理工学研究科に変革後も、積極的に大学院教育を充実させていく方針です。入学時からの6年一貫教育コースの早期選択や、学部課程から大学院博士後期課程までを一貫した短縮修了教育コースの検討など、研究と教育の継続性を重視した教育で、ボーダレス化する研究領域において、新たな研究テーマを創り出す能動的人材の育成に努めていきます。

学内外との連携

先端化学科の教員が中心となり、理科大の横断的研究組織である総合研究院の中に「先端エネルギー変換研究部門」を新たに立ち上げ、学科横断的な協力体制のもとで研究を行っています。また、海外研究機関(大学および国立研究機関)との協定締結や国際共同研究を積極的に展開し、これらの研究プロジェクトに参加する大学院生をグローバル人材として育成。連携大学院方式の拡充や、先導的研究を実施する外部研究機関との共同研究の充実化など、他学部他学科および他研究機関教員などとのコラボ・融合を積極的に推進しています。

「創域」する研究

汗に着目したバイオ燃料電池で、医療・スポーツ分野の可能性を拡大

板垣・四反田研究室 | 四反田 功 准教授

身体に装着して利用するウェアラブル型デバイスの実用化には、安全で長寿命な軽量・薄膜型電池の開発が必須です。四反田准教授らの研究グループは「バイオ燃料電池」に着目し、乳酸を燃料とするウェアラブル型バイオ燃料電池アレイを開発。和紙製の基板と汗中の乳酸を利用して高出力を生み出す仕組みを確立し、汗中乳酸濃度を検出して健康状態などをリアルタイム管理する自己発電型バイオセンシングデバイスの開発に繋げています。

汗中乳酸で発電するバイオ燃料電池

汗中乳酸で発電するバイオ燃料電池

無機・分析化学分野

  • 高機能酸化物の開発による革新的高性能二次電池の開発
  • マテリアルズインフォマティクスおよびプロセスインフォマティクスを駆使した多元系機能材料の探索

有機化学分野

  • 光開始剤・塩基増殖剤の開発と高感度フォトポリマーの創製
  • 有機―無機ハイブリッドによる機能材料の開発
  • 新規有機合成反応の開発による高付加価値有機分子の高効率的合成法の創出
  • 有機分子固体界面の制御による高性能有機半導体デバイスの開発

物理化学

  • 低環境負荷・高機能な界面活性剤の開発
  • 導電性ダイヤモンドナノ粒子の開発と高性能蓄電デバイスへの応用
  • プラズマプロセスを駆使した革新的機能材料の創製

電気電子情報工学科

Department of Electrical Engineering

「創域」するしくみ

3つの専門コースを設置

2023年度より、電気系3分野のうち、特定の分野に特に関心のある志願者を対象とした「専門3コース入試」を導入。一貫してその分野を志望し、特定の条件を満たした場合には、その分野の研究室に優先配属する制度を開始します。

一方で、電気系3分野を広く学びたい志願者については、1年次に共通的な内容を学びながら興味のある分野を探し、2年次から系(コース)を選択して、学修していくカリキュラム体系とします。

「創域」する研究

発電の概念を変える、持続可能な次世代太陽電池

杉山研究室 | 杉山 睦 教授

有限な資源に頼らない、持続可能な「再生可能エネルギー」として、杉山研究室では太陽光電池に着目して研究開発を行っています。透明で耐久性が高く、紫外線だけを吸収して発電する「酸化ニッケル系太陽電池」や、温泉ガスを使って簡単に発電できる「硫化スズ系太陽電池」は、太陽光発電のコストを削減するだけでなく、身近なものから宇宙空間まで、さまざまな場所での発電が可能になることから、普及拡大と実用化が期待されています。

酸化ニッケル系太陽電池の特徴は透明であること

酸化ニッケル系太陽電池の特徴は透明であること。紫外線だけを吸収して発電します。

  • 走行中ワイヤレス給電と再生可能エネルギーとの融合による運輸部門と発電部門のCO2削減に関する研究
  • ワイヤレス給電によるがん治療の研究
  • ポータブルな水素燃料による発電システムの研究
  • モータドライブシステムの高性能化・高効率化
  • 移動体事故防止のためのヒューマンアシスト制御
  • 電磁波の生体作用を知る
  • 透明IoTデバイスに関する研究
  • 5Gの先となる次世代移動通信システムに関する研究。
  • テラヘルツ波を用いた超大容量通信および新機能センシング
  • 帯域逓倍技術を用いたAD/DA変換の飛躍的広帯域化

経営システム工学科*

Department of Industrial and Systems Engineering

「創域」するしくみ

グローバル人材育成の強化

東京理科大学と海外の協定校の両方で学ぶ「ダブルマスターディグリープログラム」を推進しています。このプログラムでは、大学院修士課程のうち一定期間、台湾の国立陽明交通大学(NYCU)で研究を行うことで、修了時に2つの学位を取得できます。また、今後は協定校とのコラボレーションの強化を進める予定です。

俯瞰型プロジェクトの実施

経営システム工学科では、あらかじめ問題が設定されている「問題対応型」の研究プロジェクトではなく、俯瞰的な視点でプロジェクトに取り組む「俯瞰型プロジェクト」を実施していきます。俯瞰的視点でプロジェクトに取り組むことによって、問題の解決が新たな視点を創出し、プロジェクトがさらに進化していきます。本学科では「俯瞰型プロジェクト」の中心になって、活動するための人材育成・教育を行います。

「創域」する研究

導入評価指標の開発で、持続可能な農業の実現を目指す

徐研究室 | 徐 維那 講師

近年、農業分野では高齢化などによる労働者不足が深刻化していますが、こうした現状を解決する切り札として、ICT、AI、ロボットなどの最新技術を導入する「スマート農業」が進展しています。より効率的な導入を目指し、経済性・作業効率性に加え、労働環境・環境影響も複合的に考慮した、新規技術の導入評価指標を開発しています。より広い観点での評価指標により「持続可能な農業」の実現を後押しします。

導入評価指標の開発で、持続可能な農業の実現を目指す

バイオマスガス化による水素製造・精製技術から燃料電池アプリケーションの開発・評価

堂脇研究室 | 堂脇 清志 教授

SDGsの一環として、バイオマス原料(下水汚泥や木質系廃棄物)をガス化して、水素(バイオ水素)を製造する開発を行っています。さらに、その燃料を使うための導入施策として、シェアリング用の燃料電池自転車や電動工具、あるいはドローンなどのアプリケーションの技術開発とライフサイクル視点による環境評価を行っています。

機械学習を用いたエネルギーシステムの知的制御

原田研究室 | 原田 拓 准教授

代表的な人工知能技術である「機械学習」のアルゴリズム設計、および実問題への応用に関して研究を行っています。応用では、その具体例のひとつとして「エネルギーシステム」を対象としています。この研究では、太陽光発電を考慮した蓄電池の制御や電力取引市場での売買取引に関して、時間とともに変化する電力需要を満たすために、機械学習を用いることによって、状況に応じた適切な制御や売買取引行動を求めることを目的としています。

入手可能な資源を活用した持続可能な生産・物流システムの開発

石垣研究室 | 石垣 綾 教授

近年、生産・物流現場での人的資源の不足が深刻化していることから、潜在労働力としての女性や高齢者の活用が検討されております。一方で、情報技術の発展によってさまざまなデータが手に入るようになり、一部の機能を自働化し管理することが可能になりましたが、これによって新たな問題が発生しています。本研究では、人・モノ・資金・情報が限られる中、意思決定者に適切な判断の材料を提供するためのモデル化・最適化に関する研究を行っています。

高速論理型機械学習器を用いた説明可能なAIの実現

西山研究室 | 西山 裕之 教授

本研究では、学習結果を可読な判定ルールとして表現することが可能な論理型機械学習器を用いることで、現実世界の問題に対して説明可能な判定結果を提供します。その対象として、自動車運転時の散漫・居眠り運転検知に関するルール生成に始まり、酪農家のための乳牛の発育・疾病ルールの生成にも成功するなど、その応用範囲をさまざまな問題に拡大中です。

機械航空宇宙工学科*

Department of Mechanical and Aerospace Engineering

「創域」するしくみ

大学院教育の拡充

大学院修士課程においても各分野で高度な専門教育を行うために、2022年度から学科目を「応用力学」「機械情報学」「航空宇宙工学」の3つの科目群に再編します。また、学科目の数を概ね倍増し、航空宇宙工学分野の研究室を新たに開設するなど、当該分野教育研究の充実を図ります。

「創域」する研究

“乱流”研究で次世代の空を飛びやすく

塚原研究室 | 塚原 隆裕 教授

現代の航空機では、飛行における空気抵抗の約半分が機体表面にかかる摩擦抵抗です。さらに翼面上の気流は“乱流”という渦や乱れを伴う複雑な流れの状態にあり、これが更なる抵抗力を生みます。持続可能社会を目指す上で、燃費に直結する抵抗低減は、次世代航空機に期待される重要な技術の一つになります。この課題に向けて塚原研究室では、スーパーコンピュータを活用して乱流発生メカニズムの解明・予測・制御を目指した研究に取り組んでいます。

後退翼面上の微小な粗さから誘発する、乱流遷移のシミュレーション

後退翼面上の微小な粗さから誘発する、乱流遷移のシミュレーション(JAXAとの共同研究)

機械航空宇宙工学科の各研究室では以下の研究も推進しています。

新しい計算機シミュレーション技術の開発

亀裂および亀裂先端近傍のナノ・マイクロスケールの組織(析出物や介在物)と欠陥(転位)の相互作用を調べるため、新しい計算機シミュレーション技術の開発に取り組んでいます。材料の微視的組織発達に伴う破壊に対する抵抗値(破壊靭性値)への影響の具体的なメカニズムの理解を導くことを可能にします。この技術の確立により、小型モジュール炉(SMR)など、新たなエネルギー源と期待される構造物の健全性評価の信頼性向上を目指しています。

AIによる乱流現象推定

深層学習などのAIを活用して、乱流による熱・物質輸送現象を推定し、有害物資の漏洩源即時推定や、高負荷な数値シミュレーションの(精度を維持しつつ)高速化などを実現していきます。AIの学習には、大型計算機を利用した高精度なDNS(乱流モデル不使用の厳密な支配方程式の直接数値計算)データベースを用いることで、高精度な学習と推定を担保していきます。

高性能・コンパクトな冷却デバイス「自励振動ヒートパイプ」

情報処理機器の計算性能の制約は、発熱除去(冷却)の限界が支配的であり、革新的な高性能冷却技術の確立により、あらゆる機器の性能を飛躍的に向上させることが可能です。本研究では、高性能・コンパクトな冷却デバイスとして期待される「自励振動ヒートパイプ」の確立と普及を目標とし、実験と数値計算を組み合わせた手法により、ヒートパイプ内で生じる複雑な非定常気液二相熱流動現象の特性解明を進めています。

表面張力など界面物性を駆使した流体拡散・物質集合分散制御機能の研究

表面張力や濡れ性など,物質・物体が持っている特性を最大限に利用した機能実現を目的として研究を行っています。外部から大きなエネルギーを注入することなく、異なる流体を混ぜたり分離したり、流体中の微小な物体を集めたり分散させたり、といった機能が対象です。宇宙軌道上の微小重力環境や月面などの低重力環境において、生命維持・環境制御のための気液分離や、高密度発熱体冷却機構の開発などの工学的応用を目指しています。

円管内流れにおける粒子を含有する液滴の合体運動に関する研究

円管内流れにおける周囲の流体とは混じりあわない液滴の合体運動は、多孔質体を通過する混相流の問題の基礎に位置付けられます。円管内流れにおいて液滴に粒子を含有させると液滴同士が合体するのに必要な時間が大幅に減少することを見出しており、流体ハンドリング技術や化学反応の制御等への応用が期待されます。

アイソジオメトリック解析を用いた構造健全性評価用破壊力学解析手法の研究

CAD形状表現で使用されるNURBS(非一様有理Bスプライン)関数を、構造解析の近似関数として利用し、構造中のき裂欠陥もNURBSで表します。形状離散化誤差の無い高精度かつ有限要素法モデル生成が不要という高効率な解析手法構築を行っています。これは高経年化するわが国のインフラ構造物健全性評価に資するものであり、新しいソフトウエア創出に繋がります。

金属三次元プリンタによる積層造形や溶接、構造健全性評価シミュレーション

熱弾塑性有限要素法を利用した金属三次元プリンタで、積層造形や溶接のシミュレーションを行い、寸法・形状誤差のほか、残留応力も高い精度で予測可能になります。さらに構造物を使用していく中で発生する亀裂損傷に対する安全性評価を行います。この技術も、高経年化する我が国のインフラ構造物健全性評価に資するものであり、新しいソフトウエア創出に繋がります。

最適治療方針を自動決定できるプラットフォームの構築

振動音響シミュレーションおよび機械学習手法を用いた、耳小骨の再建治療における再建形状策定等の最適治療方針を自動で決定可能なプラットフォームを構築しています。この技術が構築されれば、予後における必要十分な聴力回復までを実現可能な治療方針を耳鼻科医に提供出来るため、難聴治療の改善に大きく寄与できます。さらに、工学と医療の連携による治療行為の高度化事例として捉えたとき、他の医療分野への波及効果も見込めます。

近赤外ハイパースペクトルイメージングによる深部組織の可視化

内視鏡や腹腔鏡を用いた低侵襲な検査や手術が主流になっている現在でも、可視光のカメラで見えるものは表面組織のみです。しかし、肉眼では見えない光を利用すると、生体組織深部の情報(神経、血管、腫瘍など)を観測することが可能となります。本研究では、近赤外光と分光画像を利用した内視鏡の研究開発を実施。生体深部の情報が見ることができると、浸潤した腫瘍発見や腹腔鏡で漿膜側からの腫瘍検出、術中に誤って神経を傷づけることがなくなるなど、ゲームチェンジャーとなることが期待できます。

複数の脳活動同時センシングによる集団形成・共感に関する研究

脳はまだまだ未知の領域が多く、特に複数個体の脳活動が集団形成プロセスにおいて、どのように相互作用するかは明らかになっていません。集団形成を支援し、多様な個性が協働共生できる社会を実現するには、これまで単一個体を研究対象としていた脳研究や技術開発を脱却し、複数個体の脳を対象とする新しい研究が必要です。本研究では、マウスやヒトを対象とし、集団形成する複数の個体の脳を同期センシングすることにより、社会性動物に共通した複数の脳の間でおこる相互作用の解明を実験的・解析的に行っています。

簡易歩行解析システムによる歩行トレーニング支援

歩行の定量的な解析は、個人の運動機能を増進する上で重要視されていますが、解析には専門家や三次元動作解析装置などの大規模な装置が必要です。そこで、単一のカメラやセンサを内蔵した靴により、非拘束的に歩行を計測し、個々人に応じた適切な支援を行えるシステムの開発を行っています。

反応的な姿勢制御能力を改善するウェアラブルバランストレーニングデバイスの開発

急激な姿勢変化に応じて瞬時に応答できる反応的なバランス能力は、転倒予防において重要な機能です。超高齢化社会を迎えているわが国において、バランス機能を改善することは重要ですが、自宅でのトレーニングには限界があります。本研究では、自宅でも使用な軽量化かつウェアラブルな反応的バランス能力改善デバイスを開発しています。

IC製造におけるめっき技術の高度化

人工知能やデータサイエンスが注目される中、それを支えるのがIC(半導体集積回路)の発展です。ICの中には、数百億のトランジスタが詰め込まれており、微細な配線でつながれています。この配線は、多くの場合、めっきにより形成されています。さらなる微細化や機械的強度の向上など、このめっき技術の高度化に取り組んでいます。

転がり機械要素の性能向上に関する研究

転がり機械要素の性能向上に関する研究を多く行っています。業界やユーザーのニーズが高い研究としては、射出成型機に使用されるボールねじの高負荷容量化があります。現在使われているボールねじのねじ溝は左右対称形ですが、射出成型機では樹脂材料を型締めする方向に大きなアキシアル荷重が作用して、抜く際には大きな力はかかりません。そこで、ねじ溝形状を非対称にして、アキシアル荷重負荷能力を左右対称ではなく、一方向の負荷能力を高めた設計のボールねじを開発し、実験的にも性能が向上したことを確認しました。

「システム最適化」で高効率な宇宙輸送システムの実現を目指す

航空機と同じく特別な打ち上げ設備が不要な宇宙輸送機「スペースプレーン」は、安価かつ安全に宇宙へ行き来できる手段として実現が期待されています。しかし、機体と飛行軌道の設計が相互に影響し合うため、システムレベルでの設計が難しく、手法が確立していません。この課題の解決に向け、複数の設計分野で構成されたシステムの統合を可能にするシステム最適化(複合領域最適化)の研究に取り組んでいます。

完全再使用ロケット実現に向けた高速流れと活用の研究

安心安全に宇宙を往復できる完全再使用ロケットが実現すれば一般人が気軽に宇宙へ出かけられる様になるでしょう。その実現にむけ、宇宙往復で必須になる極超音速飛行中に空気の流れがロケットに与える熱や力の予測や、その活用による飛行性能向上を狙う研究を進めています。

繊維強化複合材料の実構造設計に向けた損傷発生・進展挙動の研究

航空宇宙分野で使用される複雑構造を、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の先進複合材料で作製する場合の耐久性を向上させるため、運用中の微視的損傷発生・進展挙動を予測できるモデルについて研究しています。局所的な繊維のうねりや繊維不連続部、繊維体積含有率のばらつきを考慮するなど、より効果的な構造設計のための指針を得るために重要な研究です。

炭素繊維複合材料3Dプリンタの開発

自動車・航空宇宙用構造にも適用可能な高強度立体造形を目的として、連続炭素繊維を立体造形する「炭素繊維複合材料3Dプリンタ」の開発を進めています。炭素繊維複合材料3Dプリンタは、局所的な繊維配向制御が可能であり、最適化により炭素繊維の持つ卓越した力学的特性を最大限に発揮できます。さらに、ニアネットシェイプでの成形が可能であり、トリム等の2次加工が最小限で済むため、原材料費や環境負荷の低減にも効果的と期待されています。

数値計算に基づくCFRPの炭素繊維の配向方向の提案の研究

形状と同一の離散化表現を用いた解析を行うことで、ひずみの主方向及び主応力方向に基づいた繊維配向方向を提案しています。設計と計算の融合を実現した産業界における活用が期待されています。

社会基盤工学科*

Department of Civil Engineering

「創域」するしくみ

「土木フルセット」のカリキュラム

全国的に数少なくなってきた、土木工学の主要分野を全て学べる「土木フルセット」のカリキュラムを構築している学科です。基礎科目や、それをサポートする実験実習科目をすべて必修とし、⼟⽊⼯学の主要専⾨分野の基礎知識・基礎学⼒を備えるとともに、その基礎知識を適切に応⽤できる能⼒を身に付けます。そして将来の社会基盤を、幅広い視点から計画・設計・建設・維持管理することができる技術者を育てます。また、本学科のカリキュラムはJABEE(一般社団法人日本技術者教育認定機構)認定技術者教育プログラムであり、修了者は技術士国家試験の一次試験が免除されます。

「創域」する研究

超小型気象センサ技術で熱中症リスクを「見える化」

仲吉研究室 | 仲吉 信人 准教授

温暖化の影響で熱中症患者が年々増加し、社会問題となっています。仲吉研究室では、気温・湿度・風速・日射量・輻射熱の5つの気象因子を測定し、その人の状態や天候、周辺環境から個別に評価することで、熱中症リスクを「見える化」する超小型気象センサ技術を独自開発しました。誰でも手軽に装着できるセンサで、熱中症を未然に防げる社会の実現を目指し、日本の最高気温を記録した埼玉県熊谷市と共同研究を行っています。

手のひらの上にあるのが、熱中症リスクを見える化する超小型センサ。

手のひらの上にあるのが、熱中症リスクを見える化する超小型センサ。