INTERVIEW

留学のきっかけを教えてください

日本やアジア、ヨーロッパにおける研究では、既存の理論や枠組みを深く理解した上で研究を発展させる姿勢が重視されることが多いと感じています。一方、ブラジルをはじめとする南米の研究者には、早い段階で既存の枠を越え、新しい着想を直接つかみにいく柔軟さがあるように思われます。

私はこの相補的とも言える研究文化に強い関心を持ち、日本の研究環境ではやや不足しがちな「分野を軽やかに横断する感覚」を身につけたいと考え、今回の滞在研究を決意しました。また、受け入れ先のFerreira先生が、本学の協定校に所属されているだけでなく、私の研究分野を代表する研究者であることも大きな後押しとなりました。

研究所で用意してもらった自室にあった黒板。毎日のように黒板で議論していました。
どんな研究テーマで、どのような研究活動を行いましたか?

留学前から進めていた研究テーマ「トポロジカルな性質をもつ場とフェルミ粒子の相互作用」に、Ferreira先生のアイデアを取り入れる形で研究を行いました。先生の発想は非常にシンプルでありながら本質を突くもので、そこから多くの示唆を得ることができました。議論を重ねる中で、自身の研究を新しい視点から捉え直す貴重な機会となりました。

※系がもつトポロジカルな性質によって、その振る舞いが特徴づけられます。これらが空間構造や対称性にどのような影響を与えるかを理論的に研究しています

現地での研究活動や生活で苦労したことは?

研究以外では、滞在先での支払いに現金が必要だったことが印象に残っています。通貨表記の違いに起因する小さな行き違いもあり、慣れない環境ならではの苦労を経験しましたが、今となっては良い思い出です。

現地で訪れたOuro Preto。かつては金鉱で栄えた町で、その跡や多くの教会が立ち並ぶ急坂が特徴的でした。
文化の違いで失敗したこと、もしくは面白かったことは?

滞在していたSão Carlosは一年を通して温暖で、非常にラフな服装で生活できる点が快適でした。一方で、セミナーのために訪れた南部のFlorianópolisでは時期もあって想像以上に寒く、ブラジルの国土の広さと多様性を実感しました。

留学で実感した自身の成長について&留学の経験を今後どう活かしていきたいですか?

物事をよりシンプルに捉えられるようになったことが、最も大きな成長だと感じています。物理学では基本に立ち返る姿勢が重要ですが、形式的な理解に固執すると行き詰まることもあります。直感的に本質を捉える思考法を、第一線の研究者の姿勢から学べたことは大きな財産です。

この経験は特に論文執筆に活きています。問題の本質を明確にし、それを分かりやすく伝えることで、複雑な手法を用いた研究でも論旨に一貫性を持たせることができるようになりました。

Klimas教授(サンタカタリーナ連邦大学)のところでセミナー発表をさせてもらいました。
大学院で留学するメリットは?

研究を続ける上でも、将来就職する上でも、留学の経験は大きな価値があります。海外に共同研究のつながりができることは研究者にとって非常に重要ですし、異文化・異言語環境で生活することは、実践的なコミュニケーション能力の向上にも直結します。

留学を考えている人へメッセージ

ぜひ勇気をもって挑戦してみてください。留学で得られる経験は、必ず将来の糧になります。言語に不安を感じる方も多いと思いますが、実際には何とかなります。ポルトガル語を全く話せなかった私でも、ブラジルで充実した研究生活を送ることができました。

(おまけ)対面での交流の価値について

オンラインツールが普及した現在でも、直接会って話すことでしか得られないものがあると感じています。対面での何気ない会話から生まれる信頼関係や研究の着想は、留学や海外滞在ならではの醍醐味だと思います。

※所属と学年はインタビュー当時のものです。

※所属と学年はインタビュー
当時のものです。