私がおすすめする本

李 海燕
李 海燕准教授
東アジア地域研究、歴史学
葛飾キャンパス教養部
  • 一九八四年
    一九八四年
    ジョージ・オーウェル著・高橋和久訳
    早川書房
    2009年

    1948年に執筆されたこの小説は、1984年のロンドンを舞台に、ビックブラザーと称する権力者が支配する全体主義国家によりテクノロジーで監視される人々の生活と行動が描かれています。この小説のなかで、東アジア地域は「イースタシア」という別の全体主義国家が支配し、「自己滅却」をイデオロギーとして人々は支配されます。新型コロナウィルスの感染防止対策として人工知能を利用した監視システムの導入の是非が世界で問われる今、この名作の一読をお勧めします。

  • タコの心身問題 頭足類から考える意識の起源
    タコの心身問題 頭足類から考える意識の起源
    ピーター・ゴドフリー=スミス著・夏目大訳
    みすず書房
    2018年

    人とタコなどの頭足類は、およそ6億年前に異なる生物種として枝分かれし独自の進化を辿りました。タコは無脊椎動物としては例外的に高度に発達した神経系を持ち、ニューロン数は犬と近く、ニューロンの多くは腕の中にありどこまでが脳なのかはっきりしません。生物哲学を専門とする筆者は、生物の主体的経験がどのように発生、進化したのか、単なる物質からどのように心が生まれたのか、タコなどの頭足類の知能に注目して考察しています。

  • 美術の物語(ポケット版)
    美術の物語(ポケット版)
    E.H.ゴンブリッチ
    PHAIDON

    すぐれた美術作品は、見るたびに違った顔を見せてくれる魅力を持っているといえるでしょう。この本は、ラスコーの洞窟壁画から現代アートまで、人類の壮大な美術史を網羅しています。時代ごとに美術様式や芸術運動を整理しているため、作品の魅力を歴史の流れのなかでくっきり浮かび上がらせています。