こんにちは。学生スタッフのA.S.です。今回は少し数学から離れてみたいと思います。私は数学ばかりやっているわけではなく、小説を読んだり書いたりする趣味もあります。そして小説を書いていると度々「表現」の壁にぶつかるわけです。もちろん調べてすぐに解決するものもありますが、扱っているものは言葉ですから諸説ありといったこともよくあります。そして今回、疑問に感じたのが「自転車は押すのか引くのか」です。
自転車から降りて歩くとき、「自転車は押すのか引くのか」みなさんはどちらがしっくり来ますか?私が小説を書いているときに「自転車を」に自然と繋がった言葉は「引く」でした。しかし「自転車を押す」という表現と何が違うのか気になり、軽く調べてみました。すると『自転車は押す?引く?』といった旨の記事が沢山ありました。いくつか読ませていただいたのですが、明確に断言しているものはありませんでした。共通してリヤカーや台車が比較対象に挙げられていました。様々な見解がありましたが、私が感じたのは目的と重さによってパラメータがあるのではないかということです。リヤカーは「引く」ですが、これは荷物を後ろに乗せて引っ張るイメージが強いのでしょう。一方台車は「押す」ですが、これは重いものを前にして「引く」という表現はなかなか出ないでしょう。では自転車は……まず軽いですね。次に目的は、移動あるいは荷物の運搬だと思いますが、前カゴは二十世紀にできたそうです。つまりそれまで荷物は後ろに積むのが一般的だったわけです。諸々をふまえて私の解釈は、「自転車は元々「引く」ものだったが、今では「押す」も間違ってはいなく、現代ではどちらの表現でもよいということになっている」です。
言葉は時代に合わせて変化するものです。数十年前は誤用とされていた意味でも普及したことで、許容された言葉もあります。大事なのはその時代の人がその表現に何を感じて、その表現を通して何を伝えたいかだと思います。この変化する美しさは厳密性を追い求める理系にはなかなか無いものです。だから私は絶えず言葉を知ろうとし、言葉を使おうとするのかもしれません。