インストラクターブログ

数学は完璧?

こんにちは。学生スタッフのA.S.です。私は数理科学科に所属しています。小学生のころから計算が好きで、中学生で一般化できるxの凄さに魅了され、気が付けば大学で数学に依存する日々を送っていました(誇張しています、多分)。さて本学数理科学科には同学年で130人在籍しています。全国にもなれば、いったいどれだけの人が数学に魅了されてきたのでしょう。そんな数学ですが、果たしてそれほど万能なのでしょうか。

答えは「いいえ」です。知る人ぞ知るゲーデルの不完全性定理によって数学の万能性は既に否定されています。順を追って説明しましょう。パラドックスはご存知でしょうか。正しそうな命題がそれ自身によって矛盾を生じてしまうことです。そういったパラドックスは完璧だと信じられてきた数学における論証の確実性を壊しかねませんでした。そこでヒルベルトという数学者が数学の万能性を示そうと世界に呼びかけました。ヒルベルトは公理(数学における約束事)を矛盾なく用意すれば完全な数学体系(数学の世界)ができると信じていました。しかしそこで若きゲーデルが不完全性定理を示します。ゲーデルが証明したことを簡単に書くと、「矛盾がないことと完璧であることは両立できない」ということと「矛盾がない世界で矛盾がないことを示すことはできない」ということでした。こうしてヒルベルトの夢は砕かれ、数学の万能性は否定されました。

ではなぜそれでも数学は愛されているのでしょうか。私は、数学にできないことよりできることの方が遥かに多くこの世界を包んでいるからだと考えます。けれどももしいずれ数学がこの世の証明できることと証明できないことを書き分けられたら……完璧な論理体系になり得てしまうのでおそらく矛盾ですね。これだから数学はやめられないんですよ。

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いつかの帰り道