資料館学生スタッフのS.H.です。今、近代科学資料館では、富士山企画展が開かれています。それに伴って私は、メンデンホールという物理学者の自叙伝を読みました。メンデンホールは明治期日本のお雇い外国人で、東京帝国大学の教師を勤め、1880年に富士山、東京の海面でのケーターの振り子を用いた重力加速度測定の実験を行い、また、その重力加速度の異なりから、地球の質量や密度を推定しました。
自叙伝にはその実験をするために、富士山まで登った過程が描かれています。登山は大変なものだったようですが、巡礼者(富士山信仰というものがあり、メンデンホールは仏教徒や神道信者において富士山への登山が、メッカへの巡礼と同じようにみられていると語った)の集団についていくことで登ることができたようです。巡礼者の集団はリーダーが一歩一歩を数え、百歩に達したら一度休むということを繰り返して登山をするそうで、「登り切れるだろうか」という不安が、「次の百歩は歩けるだろう」という余裕に変わり、巡礼者の集団はメンデンホールらにとって、精神的な支えになっていたと語られています。
しかし、困難は山頂についても続きました。強風によりテントを立てることができませんでした。そこで、メンデンホールらは寺で実験をしようと考えました。住職に協力を求めると、一度目は断られましたが、二度目、実験の意義や政府の協力のもと実験が行われていることを伝えると寺の使用が許可されました。これにより、メンデンホールらは富士山の重力加速度を測ることができました。このように、メンデンホールの実験は様々な人の協力あって実現しました。ここでは、実験に至るまでについて書きましたが、企画展では実験の方法についての説明があります。ケーターの振り子がどういうものなのか、実験の測定結果などが展示されていますので、ぜひ訪れてみてください。