資料館スタッフブログ

寺尾壽展の内覧会

こんにちは.近代科学資料館学生スタッフの T.Y です.今回は現在展示中の寺尾寿による太陽と地球間距離(1 天文単位)の測定についてお話ししたいと思います.

今回私は,寺尾寿が 1882 年のフランス政府による金星の太陽面通過観測に参加した当時,どのように太陽と地球の距離を測定したのかを調べる事になりました.金星が太陽面を横切るだけで,なぜ太陽と地球の距離が分かるのか.私も最初は大変不思議でした.詳しく調べていくと,金星の太陽面通過を同時刻に離れた2地点で観測(写真で撮影するなど)し,比の関係式を用いることにより求められることが分かってきました.簡単に式で表してみると,

D : A’B’ = 写真の太陽の直径 : 写真の金星のズレ

D が実際の太陽の直径を表しており,A’B’は 2 地点からみた太陽面上の距離を表していま す.この式より D を求め,太陽の視半径(太陽の半径を角度で表したもの)を求めることに より,太陽と地球の距離を求めることができるそうです.視半径を α とすると

tan 𝛼 = (𝐷/2)/(1 AU)

より太陽と地球の距離(1 AU)を求めることができます.tan(タンジェント)の定義を思い出せば,太陽と地球の距離を求めるのに太陽の直径が必要あるのも納得ができます.ところが視半径も昔はうまく求まっていなかったようなので,太陽の直径と視半径のどちらが先に精度よく測られたのか等,調べていていまだにわからない部分があり,今後も見ていきたいです.

それにしても天文単位を幾何学的に求めるこの手法は私にはとても賢く思えました.

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太陽と地球の距離の関係