資料館スタッフブログ

円柱相貫体

こんにちは。学生スタッフをつとめてはや14ヶ月目に突入したH.Y.です    

現在、当館では企画展「数理にひそむ美」が開催されています。建築学科出身の私は、数ある展示の中で特に建築関連の展示を今回ご紹介しようと思います。

今回の企画展では「建築の美」と題して、今年世界遺産登録が決定した国立西洋美術館と、その設計者ル・コルビュジエが建築に応用した数学的理論に関する展示が行われています。「モデュロール」の実物大展示など、なかなか見る機会の無い展示が目白押しです。

実は、このほかにも建築に関係がある展示品があります。その一つが「円柱相貫体」です。名前だけではなかなか想像がつきにくい物ですが、実物を見るとその原理が非常によくわかります。この展示品は、異なる方向に交差させた何軸かの管の交差部分にどのような立体が生じるのかを示しています。この展示をよく見ると、立体の「へり」は全て直線に投影でき、また交差させているのが円柱だけであるにもかかわらずその体積は円周率πを含まない形で求められるのが、特に興味深い点です。

ではこの立体がどのように建築と関わりを持つかというと、実は円柱の鉄管同士を溶接する際などに、この「へり」を正確に求める必要が出てくるのです。特にトラス屋根を架構する際には頻繁に登場し、時には展示品のように3軸以上の交点も生じます。よって建築学科の1年生は図学を学ぶ際の演習として、この円柱相貫体の「へり」を作図することが授業の一環で行われます。そう考えると、円柱相貫体は建築学科生にとってなじみ深い数理の美であるというだけでなく、生活の意外な場所で活躍している美とも言えそうですね。来館された際にはぜひ、その目でこの立体の不思議を実感してみてください。

企画展「数理にひそむ美」は、12月10日(土)まで開催されています。開催期間は残りわずかとなりましたが、ぜひお越しください。

mokei
円柱相貫体