私の授業改善
岩澤 佳太(経営学部 経営学科 准教授)
応用原価計算は,前期開講「原価計算」の続きに位置づけられる講義であり,「原価計算」で実施している工夫はそのまま継続しております(詳細はこちら「私の授業改善『原価計算』」)。そのうえで「応用原価計算」では,さらに高度な学びを提供するため,以下の取り組みを加えています。
① ゲストスピーカーの招集
学習内容の実務でのイメージがつくように,ゲストスピーカーによる講義回を設定しています。2024年度はクラウド会計システムを提供する(株)マネーフォワードから水野光次郎氏と五十嵐史章氏を講義に招き,ITと会計・財務の知識を活かした仕事・キャリア形成について講演頂いています。また同社のグループ会社で,管理会計のクラウドシステムやコンサルティングサービスを提供している(株)ナレッジラボからCEOの門出祐介氏に登壇頂き,講義で学習した原価計算手法を活かしたコンサルティングでの事業改善事例について講演頂いてます。
特に印象的なのは,直接原価計算の考え方を導入したことで,慢性的な赤字からV字回復を果たした企業のケースです。学生にとっては,授業で学んだ原価計算理論が企業経営を大きく左右し得ることを実感する機会となり,会計数値と意思決定の関係を肌で理解する契機になっています。加えてキャリア形成や就職活動に関するアドバイスや質疑時間も設けており,学びと将来設計を結び付ける場として大きな刺激となっているようです。

マネーフォワード 水野氏・五十嵐氏

ナレッジラボCEO 門出氏
② 「教えすぎない」講義設計
応用原価計算では、伝統的な原価計算手法が抱える限界やその対応策を扱います。単に与えられた計算問題が解けるだけでは,実務で応用できる力にはつながりません。重要なのは,学生自身が計算ロジックやそこから生じる問題を自ら腹落ちするまで理解することです。
そのため講義では解法を一方的に講義するのではなく,学生に繰り返し問題を解かせ,自分で答えを導き出し,事例に当てはめることで問題点を考える過程を大切にしています。また実例を調べて課題としてまとめるワークも取り入れることで「自分で考え,気付き,説明する」学習サイクルを実現しています。
学生アンケートでは,「理論が現実の経営改善につながることを実感できた」「自分で考える時間が多く,理解が深まった」「ゲストの話がキャリアイメージに直結して役立った」といった声が多く寄せられています。今後も実施している工夫を引き継ぎつつ,少しでも学生の知的好奇心を刺激できるような講義設計を模索して参ります。

授業の様子