「当時学んだ、既成概念にとらわれない柔軟なモノの見方や、周囲を巻き込むコミュニケーション力は、今でも大切にしています。」
鉄道の高架下と聞けば、「暗い」「怖い」「うるさい」と、ネガティブなイメージを持つ人も多いだろう。しかし近年は、高架下を活用した再開発が各地で注目を集めている。
株式会社AEの添田さんが設計に参加した「日比谷OKUROJI」もその一つだ。ジェイアール東日本都市開発が事業主としてスタートしたこのプロジェクトは、JR有楽町駅と新橋駅の間、日比谷の東側に位置する約3 0 0 m の高架下空間。100年の歴史を誇るレンガアーチに、一歩足を踏み入れれば、ファッションやグルメ、雑貨などのオシャレなお店が並ぶ、大人のための路地が広がる。「メイン通路になっているこの場所には、以前、建物が建っていて、解体するまで詳細は分からなかったのですが、本来の姿を生かしつつ、間接照明など光の力を使い、より魅力的な通りに見えるよう工夫しました。また、多くのテナントさんが入るので、建物自体にはあまり色を使わず、控えめな設計にしています」。これまで一級建築士として、一般住宅から大きな商業施設までさまざまな設計をしてきた添田さん。転機が訪れたのは2009年。知人に誘われ、初めて高架下開発に挑戦した「2k540」は、高架下開発のエポックメイキングとして高い評価を獲得。以降、数多くの高架下開発に呼ばれるようになったという。「制約が多い高架下に、横に長い建物を作ることは、難しさもありますが、街づくりという意味でもやりがいを感じています」。
学生時代は、今は亡き、小嶋一浩先生の下、研究室一期生として、設計に夢中になったという。「当時学んだ、既成概念にとらわれない柔軟なモノの見方や、周囲を巻き込むコミュニケーション力は、今でも大切にしています。特に、大きなプロジェクトになればなるほど、関わる人も多いですし、自分のアイデアを具現化するためには、いかに多くの人に納得してもらい、協力体制を整えていくのかということが、とても重要だと実感しています」。現在は、高架下開発に限らず、高級ホテルの設計などにも携わっているという。添田さんの今後の活躍からも目が離せない。
