※内容は「東京理科大学報」 vol.225 掲載時のものです。

研究生活から教員へ。
次世代を担う女子中高生の知的探求心を育み、主体的な学びの大切さを伝える

難関大学への進学率が非常に高い
中高一貫の女子校で校長を務める
学校法人 守屋教育学園 吉祥女子中学・高等学校 校長

赤沼 一弘さん

学校法人 守屋教育学園 吉祥女子中学・高等学校 校長
1991年3月東京理科大学理学部第一部応用化学科卒業。1994年3月東京工業大学大学院理学研究科化学専攻後期博士課程中退。同年4月学校法人守屋教育学園 吉祥女子中学・高等学校 専任教諭(理科・化学)として入職。学年主任、進路指導部長、教頭等の役職を経て、2021年4月より校長に就任。現在に至る。

「理系=男子というイメージは、まさに先入観だと思います」

吉祥女子中学・高等学校は、難関大学への進学率が非常に高いことで知られる中高一貫の女子校だ。校長を務める赤沼さんは、もともと研究者と教師という二つの夢を抱いていたという。大学在学中は、教職課程を履修しながら、代替フロンの大気中の反応などを研究していたそうだ。「理科大で学んだことは私の宝です。特に研究の面白さや、学びに真摯に向き合い取り組む大切さを実感できたことは、今の仕事にも生きています」と赤沼さん。卒業後は家庭の事情により国立の大学院へ進んだのだが、当時同じ研究室にいた一つ上の先輩と自分との実力差に悩んだという。数年後、その先輩から「赤沼は、後輩に教えている時が一番楽しそうだよな。俺にはとても無理だ」と言われ、視野がひらけたという。「確かに、後輩への指導は自分にとって苦ではなく、塾講師や家庭教師のアルバイトでも、生徒の理解が深まることに喜びを感じていました。自分が得たものを次の世代に伝え、教え子たちがさらなる高みを目指してくれることは素晴らしいことだ」と、教員になる決意を固めた。

レンガ造りの校舎が洗練された雰囲気を醸す吉祥寺キャンパス

その後、縁があり吉祥女子の理科教員へ。「自分が教える立場になり、生徒たちの実験に真剣に取り組む姿勢や素晴らしい考察をしたレポートの数々に驚きました。理系=男子というイメージは、まさに先入観だと思います。吉祥女子の理科教育は、実験・実習を中心に、法則性を理解するとともに自然科学への知的探求心を育むことを大切にしています。私自身も、授業をする際は、生徒一人ひとりに分かりやすくより興味を喚起できるよう工夫してきました」。理系クラスの在籍者数は年々増え、今では半数を超える生徒が理系への進学を希望しているそうだ。「文系志望の学生も含め、これからの時代を担う中高生には、さまざまな問題に対して、自ら考えて解決していく力、多様性を受け入れ協働する力、それらの礎となるしっかりとした学力を、主体的に身につけてほしいと思っています」。校長となった今では、生徒に直接指導をする機会は減ったそうだが、赤沼さんの熱心な教育姿勢を見るにつれ、理学を普及させる精神は、ここにも息づいているのだと感じた。

チャンバーを備えた化学室を含め学内には4つの理科室がある