※内容は「東京理科大学報」 vol.221 掲載時のものです。

ITと法律のスペシャリストとして
企業が抱える問題をワンストップで解決する

IT×法律の分野でトップのポジションを狙う
弁護士法人モノリス法律事務所代表弁護士

河瀬 季さん

弁護士法人モノリス法律事務所代表弁護士
2008年 東京理科大学 工学部建築学科卒業。在学中よりITエンジニア、ITライター、ITベンチャー企業の経営などを経験。その後、東京大学大学院法学政治学研究科を修了。司法試験を受け弁護士に転身。2017年モノリス法律事務所を設立し独立。100社以上の企業と顧問契約を結ぶほか、企業の代表取締役や監査役、最高法務責任者等を務める。MENSA会員。

「建築学科で学んだことが今の仕事に直結はしていないけれど、理系的発想というものは、今でも変わりません」

理科大の工学部建築学科を卒業した河瀬さんは、弁護士。しかも、建築関連の訴訟には一切携わっていないというから驚きだ。河瀬さんが代表を務めるモノリス法律事務所は、ITとインターネットに特化した法律事務所だ。昨今、問題となっているインターネット上の誹謗中傷や風評被害、サイバー攻撃など、ITの知識と法律の知識の両方を要する案件を得意としている。例えば、SNS上で企業イメージを失墜させる誹謗中傷が拡散された場合、名誉棄損やプライバシーの侵害を主張し削除申請を行えるのは、被害を受けた当事者と弁護士のみ。一方、その時点で弁護士に相談しても、どの書き込みを消し、誰を相手に訴えるのか判断はつかない。だから被害にあった企業は、ITの専門家と弁護士と別々に相談をする必要があり、時間もお金もかかっていた。それが、両方の知識を持つ河瀬さんの事務所なら、ワンストップで問題解決ができるのだ。

休憩にも利用するという最上階のラウンジ。

幼い頃からPCを使いこなしていたという河瀬さんは、大学在学中、すでにITエンジニアとして業務を請け負いながら、ITライターとして専門誌への寄稿、さらには自らIT企業を経営していたという。「弁護士としてのスタートが遅かった分、心がけたのは『選択と集中』。案件は得意のIT分野に絞り、より深く切り込み経験を積んできました」。徹底した選択と集中のおかげで、事務所は多くの企業から信頼を得て、開所からわずか4年で、弁護士8人、所員31人を抱える事務所へと成長した。さらに5年以内に、IT×法律の分野でトップのポジションを狙うという。「建築学科で学んだことが今の仕事に直結はしていないけれど、理系的発想というものは、今でも変わりません。もっと言えば、理科大に入っていなければ、数学やITというものを、どう社会活動とつなげていくかという発想はなかったかもしれません。分野は違えど学部を卒業していたことで、法科大学院にも行けましたしね」と笑う河瀬さん。華麗なる転身を遂げた河瀬さんのように、これから先、理科大の卒業生が、工学や化学に強い弁護士として登場する日も近いのではないだろうか。

河瀬さんの著書『デジタル・タトゥー ~インターネット誹謗中傷・風評被害事件ファイル~』は、2019年に放映されたNHK土曜ドラマ『デジタル・タトゥー』の原案になっている。