現在はボーイング777の機長として
活躍する田島さん。
意外にも、パイロットという仕事を選んだきっかけは、大学の後輩からのすすめだったという。
「就職活動を始めるまでは、自分の職業イメージの中にパイロットという選択肢はまったくありませんでした。漠然と『メーカーに入社して、国際的な舞台で仕事ができればいいな』と考えていたんです。きっかけをくれたのは、今理科大で准教授をしている平塚三好(東京理科大学大学院知的財産戦略専攻)さん。僕が大学院1年の時に、彼は学部4年で、一緒に研究をやっていたんですが、ある時平塚さんが『田島さん、こういうのがありますよ』と持って来てくれたのが日本航空の自社養成パイロット募集の案内でした。僕が初めてパイロットという職業に興味を持ったのはこの時でした」
試験は、筆記から英会話、飛行適性検査など、6次まである試験すべてにパスしなければならないという。
「1月に始まってひと月に1回、半年にわたって試験がありました。1次試験では1つの部屋で約100人の学生が受験したんですが、メガネをかけている学生が1人もいなかったことが、強烈に印象に残っています(笑)」

現在は国内線のほか、米州線、アジア線でのフライトを担当。パイロットという仕事のやりがいについて聞いてみると、
「運航条件が悪いフライトでは高い集中力が求められます。揺れが予想されるときには、適切な高度やコースを選んで機体の揺れを最小限に抑え、客室乗務員がより上質なサービスを行えるように注力します。また、福岡や伊丹のような市街地の空港に着陸する際には、逆噴射を抑えるなど、なるべく騒音をたてないように神経を使います。困難な状況でのフライトを無事に終えることができた時には、達成感を感じますね」
「理科大の後輩たちにメッセージを」、とお願いすると「ぜひ英語の実力を身につけてほしい」という答えが返ってきた。
「理科大生は伝統的に英語が苦手なんですが(笑)、社会人になって周囲を見渡してみると、英語が苦手なためにキャリア形成の選択肢を狭めてしまうと感じる場面が多いんです。そしてもう一つ、自分の専門分野以外に“得意技”を持つことも大切です。脳腫瘍の『鍵穴手術』の考案者として知られる脳神経外科医の福島孝徳さんは、学生時代に趣味のドラムに熱中していたそうです。そして、ドラムの練習で培われた両手を自在に動かす技術が“神の手”と称される手術手技につながったというのです。専門分野と“もう一つの得意技”が結びつくことで新たな可能性が生まれる……そんなブレイクスルーが求められていると感じます。閉塞感が漂う時代ですが、ぜひ広い視野で自身の将来像をイメージしてほしい……そう願っています」