現象を体験し定着させる試み
木村吉郎(創域理工学部 社会基盤工学科 教授)
(1)授業科目との密な連携
「構造力学実験」は,2年生前期の必修科目で,学生にとって最初の実験科目です.1班5名程度として,グループワークも重視しています.この構造力学実験の内容は,「材料力学1」(1年後期),「材料力学2」(2年前期),「材料力学演習」(2年前期)の内容のうち,特に深く修得させたい項目を選んで構成しています.これらの授業で学んだことを,この実験で,梁を製作し,荷重を加えて,実際どのような挙動が生じるか体験するものとしています.部材に生じる現象や,その解析方法について,体験を通して実感できるようにしていることが工夫です.
(2)前試問
実験は,内容を十分理解して行わないと意味がないので,内容の理解度を,実験前に口頭試問により確認しています.この前試問を重視していて,15回の実験の授業のうち,教員側からみると8回を前試問にあてています.班ごとに実施し,用語の定義や意味,式による導出などを,班員につぎつぎとあてて,黒板も用いながら解答させます.厳しく試問し,間違えたり,解答できない場合は,出直しになるので,学生にはプレッシャーがかかります.
アンケートでは,厳しい,という意見もありますが,全体的には理解を深めるのに役立ったなど,ポジティブコメントが多いです.
(3)ブリッジコンテスト
条件(材料,寸法や,たわみ変位の小ささ)を満たす梁(橋梁)の模型を,班ごとに設計,製作し,基本的には重量の軽さ(≒経済性)を競う形のコンテストを行っています.コンテストの前にはプレゼンを行い,どのような考えで設計・製作したかを班員全員で分担して発表してもらいます.コンテストにすることで,各班が熱心に取り組んでくれています.
コンテストでは,思わぬ変形が生じて荷重を支えられない班があったり,また結果の順位発表も盛り上がります.アンケートでは,ブリッジコンテストのグループワークが楽しかった,などのポジティブコメントが多いです.試行錯誤で行う設計の流れについても,ある程度実感できているようです.
アンケートの点数が高かったのは,盛り上がったブリッジコンテストの直後に記入させていることが大きな理由と思っていますが,この実験を通して,構造設計の基礎となる部材の挙動を実感することにはつながっているのではないか,と考えています.