私の授業改善

物理数学2A、物理数学2B
2019.10.09

鈴木 克彦(理学部第一部 物理学科 准教授)

 「授業改善」。この言葉を聞くと「誰のための?誰が行う?」と頭に浮かびます。「学生のため」に「教員が行う」と学生に迎合するようで片手落ちです。私自身は学生に対して、「教員と学生が共に協力して授業をより良いものにする作業で、その責任は教員と学生が等しく負っている。」と説明しています。私の工夫も「授業改善」であれば、学生が授業を受ける姿勢や積極性を向上させることも不可欠なピースです。そのすべてが重要なはずですが、この紙面では最近の私の試みに限って、理学部第一部物理学科の「物理数学2A」、「物理数学2B」を例に紹介します。

 

カリキュラムデザインの見直しと実行シラバスの作成

 これらの科目は週2回授業があり、元々は「物理数学2」と「物理数学演習」という独立した科目でした。物理学科ではすべての主要科目について演習を一体化する試みを行っており、「物理数学2」もその一つです。しかし、形式的に合併させるのではなく有機的に講義と演習を配置する方法を検討し、実行シラバスを作成しました。具体的には、一つの学習項目について

「基礎事項の説明(講義)」→「応用の紹介(講義、演習)」→「練習(演習)」

を1サイクルとし、3回ないし2回の授業時間で1サイクルが完了します。そのために授業内容と完全に対応する演習問題集を作成しておき、実行シラバスでは何週目にどの問題を扱うかまで定めてあります。不定期に演習(小テスト含む)が行われますが、シラバスは公開されており混乱することはありません。一見大変そうですが、教員側は講義に時間的余裕が生まれます。学生側からは講義から演習への流れが連続的で理解しやすいという意見が多いです。なにより講義と演習の進度が一致しないという弊害が存在しません。

 関連して、学生の「自学」を促すためにも、学生自身がカリキュラムの意図を理解することが重要です。そこで単元の最初にこれから学ぶ事項の「ロードマップ」を示し、以降授業の冒頭でロードマップのどの位置にいるかを必ず説明しています。

「授業ログ」によるフォローと情報の蓄積

 毎回の授業終了後、説明した事項、発展的事項の解説、学生から出た質問とそれに対する回答、などを「授業ログ」として記録しインターネット上で公開しています。資料の掲載や課題連絡などもそこで行いますので、学生は頻繁に見る必要が生じます。授業アンケートを見る限りでは、学生の利用度は高いようです。

 授業ログを残す別の効果は、教員が自然と過去の授業の情報を蓄積できる点です。過去にどのような質問が出て、どのように答え、授業をどう進めたか、一年経つと忘れてしまうものです。ログを残すと、それらの情報にいつでもアクセス可能になります。ログを残し始めた当初は予期していなかった効用ですが、大変重要だと考えています。

 このような試みが適切かを判断する一つの方法が授業アンケートです。授業アンケートは「適切な質問について大多数の受講者が回答し、改善のための時間的余裕が残されている」のでなければ意味がないと思っています。そこで、毎年5月下旬を目安にclassの機能を用いてこの授業に特化したアンケートを実施しています。呼びかけを繰り返すことで、履修者比で80%程度、出席学生数比では100%に近い回答率が得られています。結果については担当者間で話し合い、授業を改善し、自由記述については教員の回答を公開しています。学生の甘えとしか判断できない要求には、きちんと理由を説明して拒否しています。

 教員によってパーソナリティも教え方も異なるので改善の工夫も様々だと思います。ここで紹介した事項が少しでもお役にたてば幸いです。