「人的資源管理」の授業改善:学生が企業の取り組みを「自分事」として捉えるための工夫

人的資源管理
2023.07.20

渡邉万里子 (経営学部 経営学科 講師)

 経営学部経営学科の3・4年生向け専門科目「人的資源管理」では「人」のマネジメントに関わる理論から現象まで幅広く学びます。授業の焦点は不確実性の高い現代において、人々の能力や価値観も多様化する中、どのように個人の能力ややる気を引き上げ、個人と組織双方のゴールに結び付けていくのか?です。
 企業の人事部が担当する人的資源管理の制度をトピックとして取り扱うことが多く、学生が未体験の企業内の状況を想定しながら理解することは難しい側面があります。企業も多様な人材を包括する過渡期にあり、どの時代・どの企業にも適応可能な「万能」な制度はもはやありません。そのため、企業の外にいる学生でもアクセス可能で理解しやすい2次データ(新聞・雑誌の記事、企業HPやIR情報、ドキュメンタリー・ニュース動画)を使った演習を盛り込み、社会人生活を控えた学生が自分のキャリア観と紐づけて現在の企業の取り組みを評価する‐「自分事」として捉える場に再構築しました。

 授業の工夫は(1) 企業の取り組み事例を演習課題として用いる、(2) 学生自身のキャリア観を内省する設問を繰り返し設定する、(3) 社会人ゲストによる講演やワークショップを取り入れる、です。
 (1)については、実際の企業による人的資源管理のビジネスケースを様々な情報源を活用して紹介し、講義で学んだ理論やフレームワークを応用して学生の視点から分析する演習を行います。この演習を通じて、学生が理論と現象のつながりを意識し、様々なメディアに見る企業の現象を自分なりの視点で捉える経験を蓄積できるようになります。
 これに関連して(2)については、演習の中で自身のキャリア観を内省し、それに照らして企業の事例を評価する軸を作る設問としています。前述のように「万能」な人的資源管理の制度は存在しないので、これから社会人生活を送る学生にとって重要なことは自分なりの評価の軸を持つことであり、そのベースとなるのが自分のキャリア観であるからです。
 そして、(3)については、企業の経営者や企業人の視点をベースにした講演やワークショップを行うことによって、企業経験がない学生が自身の評価軸とのギャップを事前に理解し、社会人になった後のカルチャーショックを軽減するための心構えを目的としています。

 様々な工夫を施してはいますが、授業運営の悩みは尽きず、改善の余地も。今後も改善に努めていきます。