ストリーミング時代の講義動画活用チャレンジ

電気磁気学基礎
2023.01.31

吉田孝博(工学部 電気工学科 教授)

 工学部電気工学科1年次必修科目の「電気磁気学基礎」は、コロナ禍前には板書による講義と中間・期末の筆記試験で実施していました。2019年度には、将来の学会出張などによる複数の休講に備えて4Kビデオカメラとワイヤレスピンマイクを用いて自前で講義を収録していましたので、コロナ禍の2020年にはこのビデオを活かす形でオンライン講義をしました。

 日頃から短編動画に馴染み深い現代の学生に向けて、教科書の節や項ごとに2~20分(平均7分)に分割してBOXに置いた講義動画を、毎週6~14本(平均9本)ずつLETUSに掲載しました。この講義動画には、
・臨場感と視認性を高めるため、教員の姿やジェスチャーと説明箇所の板書が含まれるように板書範囲をトリミング。
・拡大するとともに、講義ノート内容をテロップ付与。
・板書中の無音部、言い誤り、「えー」などの不要語の箇所を、手作業で除去。チョークが黒板にあたるクリック音、教室の反響音などの雑音を除去して音声明瞭化。
・高ビットレート動画は大人数の学生の同時視聴や、学生のネット環境が弱い場合に再生が途切れやすいようなので、0.6Mbps程度のFull HDでBoxにアップロード。
などの工夫も施しました。

 講義は、学生の受講ペースを維持するため同期型オンラインとし、講義開始時には全員Zoom接続し、私のアナウンスとLETUSの小テスト受験(10分間)の後、学生はZoomから退室して講義動画を視聴しました。その間、私はZoom上で待機し、質問があるときにZoom再接続した学生に個別指導しました。講義終了10分前には全員Zoom再接続し、質問対応の全体共有や次回の小テスト範囲などをアナウンスする流れとしました。遠隔でPC相手の受講では集中力や緊張感が続かないと思い、私の講義ノート(幸い、既にWord電子化済みでした。)の3割程度を虫食い・穴埋めとしたPDFをLETUSで事前配布しておき、学生は動画視聴して講義ノートの虫食い箇所をタブレットで記入、もしくは印刷した紙面に記入し、毎週LETUSで提出してもらいました。

 対面試験を行えなかった2020・2021年度の成績評価は、全106本の講義動画の視聴有無、同期オンライン講義の出席状況、講義ノート提出状況、第7・15週の中間・期末試験過去問演習の自己添削答案、小テスト点数による形成的評価としました。

 2022年度の受講生に匿名アンケート調査したところ、9割の学生から講義動画は良かったとの回答がありました。日頃から動画配信・共有サービスで短編動画に触れることが多い現代の学生にマッチしたのかなと想像しています。また、任意の感想記入欄には、講義ビデオについて、
・視聴中、何度でも見返すことができ、自分の理解ペースに合わせられるので良かった。
・板書に加え、板書内容がテロップで表示されるので、読み取りやすかった。
・内容の説明に加えて、例題などの解説も含まれているのが良かった。
・動画は復習にも利用でき、復習がしやすいので良い。
などの感想が複数寄せられました。対面開講への回帰が進む現在において板書講義をライブで行わないことに抵抗はありますが、本学の授業実施基本方針内に記された、「知識伝達型の授業はオンラインを活用」、「「学修者本位の教育」を意識した授業の設計・運営」を行う1形態として今後も継続しても良いのかなと感じています。