私の授業改善 基礎有機化学

基礎有機化学
2023.01.31

木村力(理学部第二部 化学科 准教授)

 基礎有機化学は、理学部第二部化学科の1年生を対象とする関門科目です。より難易度の高い有機化学の内容を2年生以降で学ぶ上で必要不可欠となる有機化学の基礎的な知識を身につけるための科目です。アルカン、アルケン、アルキンを題材として、有機分子の構造や配座、有機反応および反応機構について取り扱います。

 有機分子の立体的な構造は、教科書の図を見ていてもなかなか理解できません。教科書の図は2次元の紙に書かれている上、多くの場合一方向から眺めた図しかないためです。有機分子の立体的な構造を理解するための手法として分子模型がありますが、購入費用がかかり、組み立てや分解には手間がかかります。理科大では学生がChem3Dを利用することができますので、私の講義では様々な有機分子の3次元座標ファイルをLETUS経由で提供しています。これを利用すれば、有機分子の構造を好きな方向から眺めることができ、有機分子の立体的な構造の理解が深まります。

 アルカンの配座の変化では、有機分子を立体的にとらえた上で、ねじれ形配座と重なり形配座のように、炭素―炭素結合周りの回転に伴う置換基間の相対的な位置関係の変化を理解しなければなりません。各配座の3次元座標ファイルを提供するとともに、配座が変化する過程の動画を作成し講義内で紹介しています。有機反応を学ぶときには化学式を用います。しかし、化学式だけでは講義が単調になりがちで、実際に分子がどのように動いて反応しているのかイメージするのも難しいです。私の講義では、Simmons-Smith反応などの有機反応の動画を作成し授業内で紹介しています。

 基礎有機化学は通年科目で、マクマリー有機化学の1-9章の内容を取り扱います。前期末と後期末に到達度評価を行っていますが、形成的評価として小テストも取り入れています。各章が終わった段階で10分間の小テストを行い、採点した後、授業支援ボックスを利用してLETUSで返却しています。返却後は授業内で問題の解き方を解説しています。

 私は学生時代に化学について学びましたが、教授法に関する専門的な教育は受けていません。ICTツール、デジタルネイティブ世代への対応など、時代の変化とともに新しく覚えていかなければならないこともたくさん出てきます。FDセミナー等を通してより一層、教授力に磨きをかけていきたいと思います。