「会計学入門」授業の工夫について

会計学入門
2020.01.28

山根里香(経営学部 経営学科 准教授)

 就業経験のない学生にとって、入学してすぐにビジネスの文法を学ぶ「会計学入門」は実感を伴いにくく、苦手意識を持ちやすい科目です。一方で、万国共通のビジネス言語としての性質を持つ基本的な会計学の原理原則の基礎を体系的に学んでおくことは、将来、さらに高度な会計学を学んでいくうえでも、また専門は違えども社会人としての素養を身につける上で欠かせないことです。

 簿記の基本的な考え方は、一つの経済的取引を多面的に把握する点に特徴があります。講義においては、単に記帳の方法を暗記するのではなく、取引を多面的にとらえ、仕訳を作成するプロセスの理解に重点を置いています。取引を会計的に読み解く作業を段階的に行い、最終的に仕訳が完成されるまでの流れを、実際に手を動かしながら体験することを重視して講義資料を作成しています。

 また会計学入門の講義は、講義と演習が一続きで構成されています。演習の時間は、TAやSAの学生が熱心にサポートしてくれるため、学生からどのような質問が寄せられているか情報共有をし、翌週の講義に追加で補足説明を行うなどの対応をとるようにしています。

 日本の企業は5月や6月に株主総会が実施されることが多く、ちょうど、中間試験を実施する時期にあたります。実際に公表された株主総会での報告資料などを使いながら、4月から学び始めた講義内容が実務でどのように活用されているのか話題を提供することも心掛けています。最近は、自動車よりもスマートフォンやゲーム、動画配信サービスや旅行に関心の高い学生が多いです。携帯事業会社の料金体系がどのように決定されているのか、動画配信サービス等にみられるサブスクリプションというビジネスモデルの成り立ち、航空運賃が決定されるメカニズムなどの話題には興味を示すようです。

 文法としての会計学の基本的な知識を使いこなせるようになるまでには、数学と同様に地道な演習の積み重ねが求められます。実際に講義を通じて身に着けたことを使いこなすと企業活動をどのように読み解くことができるのか、日々の学びと社会の経済現象との結びつきを理解できるようなきっかけを提供できるよう、次年度以降も工夫を重ねていきたいと思っています。