2023年後期:「基礎物理化学」

2024.11.28
●授業担当教員

 青木 健一(理学部第二部化学科 教授)

●ファシリテーター・分析者

 教育DX推進センター TL部門長/教育支援機構教職教育センター 教授 渡辺 雄貴

●授業概要

「基礎物理化学」は学部1年生向けの専門基礎の必修科目。前期後期の通年授業で、全30回のうちの22回目の「純物質の物理的変化」について講義。

授業形態:対面

参観者:教育職員7名

●参観のポイント

 青木先生から、この授業の目的は、大学の物理化学のスタートエンジンを押すこととしている。学部1年生の必修科目で履修者数は76名であるが、高校で物理を履修していない学生も含め、大学の物理化学を学ぶ機会となる。この授業を機会に専門書を読んでもらうような基礎の基礎としたいと説明があった。

 さらに、当日の授業内容で一番伝えたいこととして、「純物質の総平衡」は、高校の化学で履修しているが、その概念を大学レベルのギブズエネルギーの概念に結びつけるという目的がある。高校までで学修した現象から、大学の物理化学の授業でこういうふうに結びつけて解釈できるのかということを学んでほしいことが今日のポイントである旨の説明があった。

 続いて、渡辺TL部門長から、授業参観中には教員の授業内容や説明方法だけではなく、学生の様子や学生のノートを取る様子等、学生の学修活動にも参観のポイントとして着目してほしい旨の説明があった。

●参観後のディスカッションとポイント

 参観者から次のようなコメントが寄せられた。

(配付資料の分かりやすさ)

 参観者から、学生の理解を深めるために、課題を含め配布資料が丁寧に準備されていた印象だとのコメントがあった。

 これに対し青木先生から、問題集を3~4ページをただ渡すだけだと学生の意欲がわかないので、当日の授業内容を復習できるような内容で書き込み式の演習課題(A4サイズ1~2枚)を渡すようにしている。解答も学生にすぐに渡さず授業の3日前に公開するようにしていると説明があった。

 出版社の教科書以外にも、授業専用のノートを自分自身で作成(印刷のみ出版社に委託)して、学生に1年半使える内容で、印刷代だけの手ごろな値段で販売している。左側が授業内容、右側が板書事項等を書き込めるようになっているとのことであった。参観者から、授業中に学生がノートにしっかり書き込んでいたので、後で復習する際に効果的ではないかというコメントもあった。

(板書の使い方と色使い)

 板書の使い方や色使いも大変分かりやすかったとのコメントに対しては、青木先生から、板書で一番重要なことは黄色のチョークで記載している(ノートで赤に値する)とのことであった。後ろに座る学生から赤と青のチョークだと見にくいという意見もあり、赤や青は図で説明する際に使用して、文字は黄色と白にしている。色覚上分かりやすいように記載しているとのことであった。

(幅広い学生を対象として理解を深める授業内容)

  青木先生から、上位層の学生を念頭に、授業内で発展として研究論文の紹介を行い、物理化学の応用事例を視野にできることで、将来の研究とのつながりを説明し、学生の興味関心を引き出すようしているとのことであった。

 一方で、幅広いレベルの学生を対象として授業を行っているため、重要な部分については授業中何度も説明するように意識している。また、理二は1日当たり3コマしか授業枠を取れない関係で、演習に十分に時間を割けない分を課題でカバーするようにバランスの上で工夫しているとのことであった。

●渡辺TL部門長の総括

 いろんなことに配慮した授業設計がされていた印象で、ガニェの9教授事象の基本基礎を経験から習得されてきたことが伺える。特に、授業の冒頭で、課題の宿題の解説することで前回の授業の復習を10分程度で行い、授業で最低限理解してほしい点(復習してほしいこと)を学生に伝えることがあった。これは、新しい学習への準備を整える導入部分としてガニェの9教授事象の理論に即した効果的な内容であったとのコメントがあった。
【授業ダイジェスト動画】https://youtu.be/gPd9fr_LtDo?si=jf2YyXFsbnqK8CzD

 

[インタビュー日:2024年11月13日]