2019年 後期:「多変量解析」

2021.01.14
●授業担当教員

 安藤 格士(基礎工学部電子応用工学科 講師)

●私の授業での工夫

 私の担当している「多変量解析」は、基礎工学部電子応用工学科3年生が受講する選択必修科目です。昨今の機械学習、AI等、データサイエンスの関心度の高まりもあり、現在は多変量解析を含む多くの統計的解析手法が、RやPythonなどを使用すれば、だれでも手軽に実行可能であり、またそれら解析ソフト・ライブラリの使用方法に関する書籍も数多く出版されています。このような状況の中、本授業では解析ソフトが行う解析部分をブラックボックス化せず、その原理・理論を理解してもらうこと目指しています。
 多変量解析の理論を理解するためには線形代数の知識が必要不可欠です。他の多くの学科も同様ですが、本学科も1年次に線形代数を学びます。しかし、3年生になると多くの学生は線形代数の基礎的な知識も頭から抜け落ちています。そこで、本授業の最初の3~4回は線形代数の基礎の復習を行っています。その後、多変量解析の各種手法を学ぶのですが、まずは1変量(1変数)で説明、次に2変量で説明、そしてn変量で説明というように、変数の数を徐々に増やし、ほぼ同じ説明を繰り返しています。また、2変量までの簡単な問題を、解析ソフトは使わず、手計算で解いてもらうような課題も準備しています。教科書は指定しているものの、授業は事前に作成したスライドに基づき進め、そのスライドはすべてLETUSを使い学生に配布しています。授業では、特に数式の展開・証明は、講義スライドにあるものを、さらに黒板を使い丁寧に説明することを心がけています。同じような説明を何度もすることが一部の学生には不評のようですが、大事な内容がしっかりと頭に定着するようにあえて行っています。そのほか、少々強引なのですが、時々、授業の内容と関連するTEDの動画を視聴してもらい、多変量解析を勉強すると将来何につながるのかを、学生に考えてもらうようにしています。
 本科目は、2019年度の授業改善のためのアンケート結果に基づく基礎工学部の選定授業にしていただきました。しかし、「なぜ?」というのが率直な感想です。上述の工夫が学生からの評価につながっているのかもしれません。拙い文章ではございますが、何か一つでも授業をより良いものとするための参考になれば幸いです。

●評価・分析者

 教育支援機構教職教育センター/理学研究科科学教育専攻 准教授 渡辺 雄貴

●紹介内容

 安藤先生の「多変量解析」の授業では、昨年度までスライド形式の授業に加えて、式の展開などは板書で説明をする形式で行っていました。授業では、1年次の基幹基礎科目などの復習から、新たな内容の定着を目指しています。授業時間内に、演習の時間を設け、机間指導をしながら、個別にフィードバックをします。資料などは、LETUSで公開することから、復習にも活用できます。このように、様々な支援を行いながら、授業を実践されたことが、今回の評価につながったと考えられます。
 一方、今年度の授業では、同様の内容を非同期遠隔授業で実践されていました。時間の割合は大きく変わり、説明を30分にとどめ、60分を演習に充てています。LETUSを用いて、2種類の課題を用意しています。1つは要提出、もう1つは応用的な問題からなっています。要提出の課題は、合格するまで何度も提出することができます。
机間指導で、学生の理解度を把握していたことが、何度も提出できるという形に変え、学びを継続させていることが授業実践として素晴らしいと思いました。

*机間指導(きかんしどう):適切なアドバイスを個々人に行いながら、教室内を巡回する指導方法。

[インタビュー日:2020年12月21日]