2019年 後期:「生体情報工学」

2021.01.14
●授業担当教員

 池口 徹(工学部情報工学科 教授)

●授業改善のためのアンケートについて

 工学部情報工学科3年生後期に開講している科目「生体情報工学」を担当しています。この講義は、2019年度の「授業改善のためのアンケート」結果に基づく工学部からの選定授業にしていただきました。
 講義では、神経科学の基礎的な内容を解説しています。例えば、どのように神経細胞が振舞うのか、また、どのような実験によりこれらのデータが計測されるのか、さらには計測されたデータから、どのようにしてモデル化するのかなどです。具体的なモデルには、1963年のノーベル医学生理学賞の受賞理由にもなった Hodgkin-Huxley 方程式を用いています。また、関連する事項、例えば、Hodgkin-Huxley 方程式は4変数の微分方程式ですので、微分方程式の定性的な解法など1年生の解析学では習わないであろう内容についても話をします。
 講義では私が話をして、それに関する演習課題を毎週課しました。また、毎回の講義ではコメント用紙と称するものを配布し、講義についての感想・不明点・理解できたことなどを自由記述で提出してもらいました。受講生からのコメントに対しては毎回回答し、その内容を講義サポートページで公開しました。到達度評価は筆記試験を行いましたが、試験時にA4用紙1枚にまとめた手書き資料(両面使用化)を持ち込み可としました。
 今回の選定に伴って、教職教育センターの渡辺雄貴先生からインタビューを受け、その際、なぜ選定された(=アンケート結果が良かった)と思いますか、とのご質問をいただきました。3年生の後期開講の選択科目であり、講義内容を聞きたいと思ってくれる学生が受講しているからと考えたことはありますが、確かなことは分からないというのが正直なところです。仮にあるとすれば、それは講義に対する熱意かもしれません。本学の授業アンケートでは「講義担当者は熱意をもって講義をしたか?」という内容の質問がありませんが、一番大切なのは担当者の熱意であるとは思っています。
 さて、この講義は今年度、対面+遠隔で、つまり、ハイフレックス型で講義しました。自前で配信システムを準備するところから始まり、試行錯誤の連続でしたが、中盤以降は軌道に乗り安定して講義できたのではないかと考えています。本来はその詳細もお伝えしたいところですが、残念なことにスペースの都合もあり、別の機会があればお話ししたいと思います。

●評価・分析者

 教育支援機構教職教育センター/理学研究科科学教育専攻 准教授 渡辺 雄貴

●参観しての評価・分析内容

 池口先生の「生体情報工学」では、昨年度も90分の授業で理論的なことを扱い、明確に授業外学習の指示をしていました。内容においても、微分方程式の復習から行うなど、学生の理解度に合わせた授業設計を心がけていたのが印象的でした。授業のサポートを目的としたWebページを用意し、きめ細かい支援を行っていました。
 一方、今年度は、教室での対面授業を同時中継する、ハイフレックス授業を実践されていました。ハイフレックス授業では、スライド、板書、タブレットの映像など、学習内容に合わせメディアを選択し、臨場感溢れる授業展開がなされていました。一番の苦労は、機器の設定だそう。授業ごとに、教室に持っていく機器をリスト化されていました。
 このように、きめ細かい支援を行おうとする授業設計は、授業形態は完全対面授業から、ハイフレックスへと移行しても、続いているということが素晴らしいと思いました。

[インタビュー日:2020年12月21日]