私の授業改善
2019.10.04
松本 和子(工学部第一部 教養 准教授)
工学部第一部一年生、二年生対象の英語講読は、授業改善をもっとも強く意識している科目にあたる。ローテク時代に文系の学生として受けた英語講読授業の良さを、ハイテク時代に生きる理工系学生の授業にどのように活かしていくか、試行錯誤が続いている。改善の余地は依然としてあるものの、過去の学生アンケートで好評だった取り組みは次の二つである。
(1)e-Learning 教材の活用
一年生の授業では、2004年以来、学内サーバーに教材が置かれているNetAcademy 2を利用している。対面式授業に馴染み、その価値を評価している立場から、e-Learning 教材を授業に取り入れるまでには迷いがあった。本学でも「英語教育とe-Learning」に焦点をあてたセミナーが第一回FDセミナーとして開催されたが、e-Learning に関する研究会やワークショップで情報を収集し、何度かシミュレーションをした結果、補助教材として恒常的に利用する現在のスタイルに落ち着いた。
NetAcademy 2 がもたらした変化のひとつは、読解とリスニングとを連動させた授業を学生に提供しやすくなった点にある。テキスト付属CDと比較した場合、NetAcademy 2 は、再生スピード変換機能、部分再生機能といった便利なツールによる多様なリスニング練習がクリックだけで行える大きな強みを持っている。対面式授業方式で構文・語法などに重点をおく精読をした後、e-Learning に切り替えてリスニングを組み込んだ速読演習的授業を行うことは、「気分がリフレッシュして集中力がアップする」「気持ちの上でめりはりがつく」(学生アンケートから)という心理面でのメリットも生み出している。
(2)科学読み物の導入
二年生の授業では、数年前から広くサイエンスを題材にした教材を用いている。上の学年で控えている英語の文献講読を念頭に、専門との結びつきを強化しようという意図があっての試みである。題材は欧米の一般科学雑誌や英字新聞の科学欄を参考に、偏りを避けた領域から自分で選ぶ場合もあれば、同じ趣旨で編集された練習問題つきテキストを使う場合もある。肝心なのは、学生に自分の専門以外の分野にも関心の幅を広げてもらうことであり、専門との接点が少なそうな題材を読むときには、最新のネット記事や視聴覚資料といった補助教材を援用している。
明快な構文で論理的に要旨が展開する科学読み物は、正確な読解力を養うのに格好な教材であるばかりでなく、学生にとっては内容自体が「楽しい」「親近感がもてる」「刺激的」(学生アンケートから)と映っている。このアンケート結果は、必修から外れると同時に学生の大半が英語離れする現状が、英語で読む科学読み物の楽しさを知ることで改善する可能性を示唆しているようで、重く受けとめている。
上記はあくまでも好評だった取り組み例であり、現実には、願っていた成果が現れなかったり、学生に好感をもって迎えられなかった事例もある。学生が何を求めているのか、また、何が学生に必要なのかを見極める目をもつことの重要性を今後も意識して授業に臨みたい。