私の授業改善

「理論無機化学」
2025.10.23

工藤 昭彦(理学部第一部 応用化学科 教授)

 

  • 講義の進め方

理論無機化学は,理学部第一部応用化学科の二年次必修科目です。学生がノートを取りやすいように板書と資料のプリントを用いて講義を行っています。板書事項をプリントで配ることはしていません。また,講義期間中に講義動画をいつでも視聴できるように,LETUS上に公開しています。これにより,予習や試験前の復習をしやすいようにしています。

 

  • カリキュラムについて

本講義は,前半の溶液化学平衡論,後半の光物性化学に分類されます。応用化学科の無機系教員は,電池,イオン電導体,光触媒などの固体機能物質に強みを持っています。一方で,電気化学以外では溶液論に接する機会はあまりありません。溶液論も化学を扱う上で不可欠な分野ですので,それを補うためにこの前半の講義があります。

後半では,固体電子論,光物性の講義を行っています。われわれの周りの機能性物質は,プラスチックを除くと多くのものが無機材料でできています。たとえば,LEDや太陽電池も化合物半導体やシリコン半導体でできています。実際に赤,青,緑に光るLEDそのものの部品と電池を回覧し,その機能を体験させています。これらの物性化学をさらに化学反応が伴う機能材料への応用として,講義の最終回で私が専門としている光触媒の研究を講演方式で講義しています。これにより,本講義で学習した電子論や光物性が実際の光機能性材料にどのように寄与しているか理解でき,最先端の研究紹介によって,学生たちには刺激になります。

 

  • 講義を通して身に付けてほしいこと

光機能性物質は物理とも密接な関係があります。しかし,化学と物理では,専門言語が異なる場合が多々あります。たとえば,Fermiレベルは重要な概念ですが,化学の講義ではなかなか出てこない言葉です。

社会に出ていろいろな分野の人と議論する機会が必ず出てきます。その場合にバリアを感じないように,化学と他分野の橋渡し的な講義を心がけています。本講義はいわゆる楽勝科目ではなく,到達度試験も全て記述式です。したがって,真面目に勉強しないと単位が取れません。言い換えればよく勉強した学生にとっては達成感があると思っています。良く勉強したことによる達成感や,社会に出てから「このこと聞いたことがある」と思い出せるような講義を心掛けています。