私の授業改善

「物理化学3」
2025.09.19

酒井 秀樹(創域理工学部 先端化学科 教授)

 私は、現在、学部1年生の必修科目「化学1Aおよび演習」、2年生の選択必修科目「物理化学3」、3年生の選択科目「応用物理化学3」、さらに大学院講義「先端界面化学特論B」を担当しています。恥ずかしながら自信をもって「授業改善」と言えるような、独自の取り組みは行えていないのですが、上記講義は、対象学年も授業の位置づけも異なりますので、授業の進め方も変えるように工夫をしています。

1年生向け授業:寄り添い

 1年生の授業は必修(関門)科目になりますので、講義資料は、詳しく分かりやすい、学生に「寄り添った」ものを毎回作成して、その内容を理解できれば到達度評価試験も問題なく解答できるようにしています。また、スライドを穴あきにして、徐々に穴を埋めていくなどして、授業が単調にならないよう工夫しています。さらに、毎回の講義冒頭に、前回授業の「まとめ」を15分程度で復習し、それにより授業内容を受講者に「定着」させられるよう努めています。一方、「物理化学3」の授業ではかなり数式が出てくるのですが、化学系の学生は数学が苦手な学生が多いこともあり、式変形の着眼点や微分方程式の解法など、丁寧すぎるくらいの説明をすることを心がけています。

高学年向けの授業:主体性を促す

 一方で、高学年の授業ほど、詳細な資料を配布する「寄り添った」講義ではなく、自分で「主体的に学習する」形のスタイルに変えるようにしています。すべての内容を資料に盛り込むのではなく、講義中に口頭や板書で説明する部分にも重要な内容が含まれるようにして、資料やノートに書き込んでもらうようにしています。また、3年生の「応用物理化学3」における「状態図」に関する講義では、あえて図だけが記載された資料を配り、それを理解するための口頭での説明を図中に書きこませる形をとっています。逆に、試験では典型的な状態図を「描かせる」問題を出すこともあり、本質的な理解ができていないと高得点が得られないようにしています。

 以上のように、下級生の基礎科目では、丁寧で学生に「寄り添った」授業を、一方上級生の専門科目では、学生が自分で主体的に勉強しなければ理解できないような「突き放した」授業に敢えてしている点が私の講義の特徴かもしれません。学生が卒業研究での研究を開始するまでに、誰かに教えられるのではなく、自分で勉強して専門分野の理解を深めていけるような学習スタイルを身につけて欲しいと願いながら日頃の講義を行っています。