私の授業改善「授業の味」
渡辺量朗(理学部第一部 化学科 准教授)
- 理由はどこに?
私の授業が2023年度の学部選定授業になり、大変光栄ですが驚きました。そこで今回の記事執筆を引き受けるにあたり、具体的に何がよかったのか学生からのコメントを教育DX推進センターに教えてもらいました。
①教科書に即した講義
②フリッツ・ハーバー研究所の話が興味深く、導入部分で興味が湧いた
③LETUS上で授業復習用動画を提供
④板書が見やすかったため、理解しやすかった
上記②は、私が本学着任前に5年間研究グループリーダーを務めていたドイツの研究所が輩出したノーベル賞受賞者7名や関連する著名な物理化学者を紹介する、授業冒頭で行なう小話で、学生のモチベーションを高めるために2012年度から始めたものです。②以外も以前から特に変わっていません。今回、アンケートの質問項目すべてで平均点を上回っていたそうですが、突然に高評価になった理由はどこにあるのでしょうか?
- それは宇宙
記憶をたどり、私が参画している東京理科大学宇宙教育プログラムの第3期のことを思い出しました。第3期では受講生たちが班に分かれて宇宙教育教材を発案して自らつくり、中学・高校に出向いて宇宙授業を実施しました。そんな受講生のために本学井藤元先生のファシリテーション能力育成講座(漫才師やミュージカル俳優を招聘)、興治文子先生の教育理論や教授法についての授業などが用意されており、私も便乗して受講したところ、目からウロコで大変刺激になり、教える楽しさと喜びを知りました。それが2022年の秋のことです。ですからこれがアンケートでの高評価に直接結びついたに違いありません。
- 授業の味
「私の授業改善」の記事を書くのはこれが2回目。前回記事「一品二魄三声四節」から約8年、今の私は「三声四節」をクリアし「二魄」の域までには到達できたのではないかと思っています。では「一品」はどうかというと、それはまだ先が見えません。
ただ、今は「品」よりも、「味」のある授業を目指したいと思っています。それは、教師の生きざまや人生観を反映した「人間味」のある授業と言えるかも知れません。前回記事でも言及したAIがいよいよ人間を凌駕しつつある今日ですが、「人間味」においてAIは相手にもなりません。ベンジャミン・ザンダー氏のTEDのプレゼン「音楽と情熱」のようにはいかなくても、学生たちと知的で楽しい時間を共有できる、そんな授業ができたら素晴らしいなと思っています。