大学の薬学部には6年制と4年制の学科がある。卒業すると薬剤師国家試験の受験資格が与えられる6年制は、病院や薬局などで薬剤師として活躍する人材を多く輩出している。東京理科大学薬学部薬学科も6年制だが、薬剤師になるための教育だけでなく、薬学分野の幅広い研究に力を入れている。
平嶺さんの研究テーマは「放射線から人間の体をいかに守るか」。宇宙空間では地上の100倍以上の量の放射線が飛び交い、人間が活動する障壁となっている。この問題を解決するために放射線の人体への影響を調べ、人体を守る薬の開発につなげるというスケールの大きな研究に取り組んでいる。
その活動は地道な実験の積み重ねだ。様々な試薬とともに細胞に放射線を当て、細胞へのダメージがすくない試薬を探しだすとともに、ダメージが起きるメカニズムを解明していく。選択肢が膨大にあるなか、実験結果のほとんどは想定通りにならない。平嶺さんは「そういう時に何が起きているのかを検証するのが難しい」とする一方、「誰もわからないことをデータで解明していくところがおもしろい」と語る。
今年初めにはドイツの国立宇宙研究機関に3か月留学し、世界の研究現場での経験を積んだ。実験やディスカッションにも参加したが、「大学で学んだ技術や知識が通用した」と手ごたえを口にする。卒業後は大学院で研究テーマを追求したいと話し、さらにその先に思い描く夢について「無重力空間での実験に興味があり、そのために宇宙飛行士になりたい」と目を輝かせる。