2021.09.01
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身近な水を「物質・生命・環境」から多角的に研究

ウォーターフロンティア研究センターは、学術分野の枠を超えた材料表面・界面における水の学際研究拠点です。「物質と水」「生命と水」「環境と水」の3グループで形成されており、物理・化学・材料・機械などの専門家を結集して、主に材料表面・界面における水の研究を多角的視点からアプローチしています。

水の動きは、材料の表面の形状や化学組成によって複雑に変化するため、予測や制御が困難です。そのため、水と物質の相互作用を系統立てて理解する学理の構築が必要とされています。

たとえば元祐教授は、マイクロ・ナノ熱流体工学の専門家です。医療診断機器を始め、多くの分野で機器の小型化が進むなか、元祐研究室では、肉眼では見えないナノレベルで液体の動きを解明し、環境負荷低減や超早期診断技術などへと活用する研究を進めています。

また、酒井准教授は、食器洗いやボディソープなどに使われている「界面活性剤」の研究を行っています。酒井准教授の研究室では、少量で優れた効果を発揮する「ジェミニ型界面活性剤」を開発したり、泡沫で吐出できるエタノール消毒剤を開発したりするなど、健康的で衛生的な環境作りへの貢献を目指した研究を進めています。

社会貢献を目指して、共同研究、産学連携研究を推進

ウォーターフロンティア研究センターでは、さまざまな社会のニーズに応えるため、国、大学、研究機関、メーカーと連携した共同研究を推進しています。1つの研究室で行う研究範囲には限界がありますが、ほかの研究機関と連携することで、新たな角度からの研究を可能にしているのです。

たとえば、エネルギーや医療の問題の根底には、常に材料表面・界面における「水」の挙動が関係しています。

エネルギー問題への取り組みでは、エネルギーの摩擦損失を低減させる潤滑油添加剤に関する研究を産学連携で実施しています。潤滑油に微量成分として含まれる水が材料表面に作用し、添加剤の効果に影響する場合があるため、水の挙動をとらえるのはたいへん重要です。

また、医療用の材料の分野では、他大学や医療メーカーと連携し、人工関節軟骨が摩擦によって劣化するのを防ぐため、材料の表面形状や化学組成を研究しています。この研究により、劣化しづらく、再手術が不要になる人工関節軟骨の開発が進められています。

このように他の研究機関やメーカーと連携することで、より専門性の高い研究が可能となり、直接社会に役立つ技術を生み出すことができるのです。ウォーターフロンティア研究センターは、環境に優しい高効率で低エネルギー消費型の社会の実現を目指し、幅広く垣根を超えた多くの知を結集させ、研究開発を進めています。

ウォーターフロンティア研究センター

■ 主な研究内容

研究分野は、材料表面・界面における水の挙動。ナノメートルスケールの水の構造から、材料表面や摺動界面において発現する物性や機能の起源を明らかにすることを目的とした研究を行っている。

工学部 機械工学科
元祐昌廣教授

■ 主な研究内容

研究分野は、マイクロ・ナノ熱流体工学。高効率反応のための界面流や微粒子の制御、計測技術開発を行っている。

理工学部 先端化学科
酒井健一准教授

■ 主な研究内容

研究分野は、コロイド・界面化学。界面活性剤の開発や機能性の評価、αゲルと呼ばれるクリーム状製剤の評価、ならびに固体と液体の界面でおこる吸着現象の解析などを進めている。

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