2021.08.11
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学生に理工系の専門知とともに、教養知の学びを提供する

理科大では、2021年4月に全学的な教養組織として「教養教育研究院」を設置しました。教養教育が目指すべきものは、専門性を身に付けながら「市民の感受性と思考」を併せて持てるような学生を育てることです。
たとえばSDGsの17の国際目標のうち、1つの目標を成し遂げようとして、異なる目標と相反する行動をとってしまうことがあります。一つの目標を達成することだけに目を奪われてしまうと、たとえその行動が合理的に見えても、全体として非合理的な結果を招くことがあるのです。

SDGsに貢献できる人間は、常に別の視点を持っていられる「複眼的思考」を身に付けていなければなりません。また、1つ1つの目標を統合できるような「総合的思考」や、経済、社会、環境についてバランスよく捉えられる「調和的思考」も必要です。

そこで理科大では、これらの思考を身に付けるために、2022年から従来とは異なる教養教育を実現していきます。これまでの教養教育は1~2年生で履修単位をほぼ取得し、3年目以降は専門教育に特化するカリキュラム編成でした。これを見直し、学部4年間(あるいは6年間)を通して、教養教育を受ける仕組みを構築したのです。

学生生活の全てを通じて、複数視点からの思考力を育む

教養科目は専門科目とは異なり、学部・学科の枠を超えた出会いを創出します。
専門知は、未来の社会に役立つ重要な知識です。しかし、専門知を共有する専門家という同質集団のなかでは、効率性や合理性を追求するあまり、正しい判断を見失ってしまうこともあります。ある視点からは効率的・合理的ではないとしても、排除してはいけないものが存在するのです。
そのことに気付くためには、何かを決定する前に一度立ち止まって、別の視点からもよく考えなければなりません。そうした多角的な判断を養うことこそが、教養教育の目的といえるでしょう。

教養教育研究院の愼教授は、専門教育を受ける学生の中に『もう一人の自分』すなわち『思考の同伴者』を育てていくことが教養教育の果たすべき役割であるといいます。排除してはいけないものに目を向けられる思考力を、教養教育が育てるのです。

1人の人間が複数の思考を持つことは、決して簡単なことではありません。だからこそ、教養教育研究院では、学生時代の全期間を通して教養教育を提供し、世界の多様性はもちろん、価値の多元性と出会う機会を作ります。

教養教育研究院 葛飾キャンパス教養部
愼 蒼健教授

■ 主な研究内容

教養教育研究院長を務め、大学の教養教育について新しい発想のもと、改革を行っている。一方で、専門分野である科学社会学・科学技術史 (科学史、東アジア医学史)の研究にも精力的に取り組んでいる。

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