2021.08.10
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温暖化による熱中症患者増加を背景に、求められるリスクの見える化

地球温暖化や都市温暖化の影響によって、近年ますます増え続けている熱中症。救急搬送されたり、死亡したりする熱中症患者は、高齢者層や運動を行っている若年層により多く見られ、社会問題となっています。また、炎天下で作業することの多い建築現場でも熱中症を回避したいというニーズが年々高まっています。

都市の気象に関する研究を行う仲吉研究室では、熱中症にかかりやすい傾向のある年齢層や職種の人に熱中症リスクを知らせるため、「熱中症リスクの見える化」ができる装置の開発を目指しています。

熱中症リスクを見える化するためには、「気温、湿度、風速、日射量、輻射熱」の5つの気象因子を測定する必要があります。

理想は、5つの気象因子を高密度に測定し、さらに年齢や性別、服装、体型といった個人の属性や状態を考慮したときのリスクを見える化し、個別に提示できるようにすることです。そのために気象シミュレーションを行うだけではなく、電気回路の制作や人間の温熱生理の解析を行うなど、多岐にわたる研究を統合しています。

仲吉研究室では熱中症リスクの見える化を実現させるため、小型気象センサ技術の開発を独自に進め、従来型のセンサと比べて格段に小さい定点設置用の小型センサを完成させました。

超小型可視化システムの開発から実装実験へ

仲吉研究室では、さらに極小化させた「誰にでも手軽に装着できる超小型のウェアラブルなセンサ」の開発を目指しています。5つの気象因子から熱中症への個人に対するリスクを求める解析アルゴリズムを開発して、より精度の高いものへと進化させる取り組みを行っているのです。

2021年の夏には、日本の最高気温を記録した埼玉県熊谷市で、開発したセンサを多点に設置し熱中症リスクを見える化する実証実験をスタート。

今後は、気象因子に対して自分がどの程度の熱中症リスクを負担しているのかが手軽に見られる仕組みを開発し、ビジネスモデルを構築させていく予定です。

仲吉准教授は、「学生は専門領域を超え、複数の学問を横断的に学び、それぞれを結び付けながら楽しく研究を行って欲しい」と願っています。地球温暖化による深刻な気象変動から人の命を守るために、仲吉研究室では今後も複合的な研究を柔軟に融合させ、熱中症を未然に防げる社会の実現を目指していきます。

理工学部 土木工学科
仲吉信人准教授

■ 主な研究内容

研究分野は、都市水文気象学や温熱生理学。「安心快適な都市空間創出」を目的に、「都市形態」-「大気環境」-「人間健康」、の関係定量化、および快適都市空間の提案に関する研究を行っている。

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