2021.08.10
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医療の進歩を推進するバイオマテリアル

先進工学部・マテリアル創成工学科の菊池研究室では「バイオマテリアル」の研究を行っています。バイオマテリアルとは、人体に役立つ材料のことです。

たとえば、コンタクトレンズや人工血管は、人体の機能を補う・置き換える働きをしているバイオマテリアルです。

また、病気やけがの治療・診断に役立てられるバイオマテリアルもあります。病気になったとき、体内で変化する物質のことを「バイオマーカー」といいますが、このバイオマーカーだけを検出するバイオマテリアルを活用すれば、インフルエンザやがん検診も自宅で簡単に行うことができます。病気を早期発見できれば、完治の可能性が高くなり、治療費を抑えるのにも役立つでしょう。

このようなバイオマテリアルの研究を通して、医療の進歩と、多くの人の健康に貢献することが菊池研究室の目標です。

安全で効果的な薬のデリバリーシステムを研究・開発

菊池研究室では現在、バイオマテリアルの特徴を生かした薬を効率よく体内に届ける2つの研究を進めています。

1つは、骨を再生できる「ハイブリッドマテリアル」の研究です。ハイブリッドマテリアルとは、薬物を包んだ「コアセルベート」という物質を骨と同じ成分で覆ったカプセルのことです。これを骨粗鬆症の骨に投与すれば、カプセルの外側は骨になっていき、同時に内側から薬が放出されて、骨の再生を促してくれます。

もう1つは、体内での薬の働きをコントロールする「ドラッグデリバリーシステム」の研究です。

たとえば、がん治療に使われる薬物は、本来の薬効と同時に副作用のリスクがあることが課題です。しかし、薬物をハイドロゲルで包み込んで、がんの周辺で少しずつ放出させたり、薬物を包んだゲルを患部に直接貼ったりすれば、副作用を抑えることが期待できます。

画期的なバイオマテリアルは簡単には見つからないものですが、菊池研究室では「ものづくりの楽しさと奥深さ」を味わいながら、医療を革新する未知の発見を目指し続けています。この積み重ねは、2030年に向けたグローバルな目標の1つである「健康と福祉の推進」にもつながっていくでしょう。

先進工学部 マテリアル創成工学科
菊池明彦教授

■ 主な研究内容

研究分野は、生体医工学・生体材料学(バイオマテリアル、機能性高分子、DDS、再生医療、組織工学)。人体で最適な機能を最大限に発揮する、新しいバイオマテリアルの開発を目指して研究を続けている。

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