2021.08.04
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CO2を「減らす」だけでなく「活用する」技術の開発

世界が抱える大きな環境問題、地球の温暖化は、二酸化炭素(CO2)の増加が原因の1つだといわれています。CO2は、19世紀以降の産業活動の活性化によって増加し、今もなお加速しているのが実情です。同時に、これまでの重要な資源であった化石資源の枯渇も問題視されています。

CO2の排出を減らし、石化資源に変わる新たな炭素資源の開発が望まれるなか、杉本研究室では「CO2こそが新たな代替資源(有機化合物の合成原料)になる」と考え、研究を進めています。

CO2は自然界に豊富に存在し、しかも安価で毒性もなく不燃焼という特徴があるため、合成化学の観点から眺めて重要な化学材料とみなすことができます。大気中に存在するCO2を液体や固体へ物質変換することができれば、CO2の増加と化石資源の枯渇問題を同時に解決できるのです。

杉本研究室では恩師が50年以上前に開発した、CO2からプラスチックを作る独自技術を引継ぎ、実用化に向けた共同研究をメーカーと推進中です。この画期的な研究には、資源・エネルギー・環境の諸問題を解消する有効な手段になると、世界から大きな期待が寄せられています。

「資源を守る化学・環境に優しい化学」を目指して

杉本研究室では、CO2を使った新素材の有効活用を目指し、日々、研究に邁進しています。近い将来、発電所や工場などから排出されるCO2を原料にしたプラスチックを作るシステムの構築を完成させる予定です。また、海洋プラスチック問題を解決するために、「魚のエサになるプラスチック」の開発も構想中です。

ほかにも、杉本研究室では「生命現象を人工的に再現する化学」にも取り組んでいます。この研究は、生体内で必要な化合物を生産する「酵素」に着目し、酵素の構造を摸した新しい分子の設計を目指しています。生体内の仕組みを手本として、新しい材料作りに生かしていく試みは、限りある資源を守り、環境に優しい化学を目指す杉本研究室ならではの姿勢といえるでしょう。

未知の素材を生み出すためには試行錯誤の日々が続き、多くの苦労も伴います。しかし、杉本研究室では、その試行錯誤も楽しみながら、「有機化学」と「高分子化学」の難解な課題に向き合い、社会に役立つ新素材の開発を粘り強く進めています。

工学部 工業化学科
杉本裕教授

■ 主な研究内容

研究分野は分子量の揃った高分子材料の合成、二酸化炭素の化学的固定、不斉認識と不斉合成。高分子材料と二酸化炭素を合成することで化学的固定を目指す研究を行っている。

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