2021.08.04
続きを読む

愛着・所属の感覚や喜びを呼び起こすシビックプライド

伊藤研究室では「シビックプライド」について研究を進めています。シビックプライドとは、直訳すると「都市に対する市民の誇り」という意味です。単なるまち自慢ではなく、自分がかかわることでよりよいまちづくりが行われている、という当事者意識や自負心のこと。まちのことを知り、自分なりにかかわっていくことで、まちが魅力的になることが自分自身の喜びになります。

19世紀ヴィクトリア朝時代のイギリスでは、建築物がシビックプライドの象徴になっていました。リーズやリバプールなどの都市では、自分たちの手でよりよいまちをつくっていこうというシビックプライドの気運がこの時代に高まり、市民が公共建築の建設を呼び掛けたり、寄附をしたりしました。 

1990年代以降は、都市再生の動きが盛んになるなかで、シビックプライドの重要性が再び注目されています。

伊藤研究室では、世界各国と比較しながら、利便性や経済性だけではない、長く住み続けられる生き生きとした日本のまちづくりを目指し、人の感情にかかわるシビックプライドを科学的に分析する研究を推進しています。

日本におけるシビックプライドと都市環境の関係性を調査・分析

伊藤研究室では建築などの都市環境とシビックプライドとの関係をテーマに、日本の都市のシビックプライドの実態を調査しています。

日本語には、シビックプライドそのものを表す言葉はありません。しかし、シビックプライドを愛着、参画、アイデンティティ、持続願望という要因に分解すると、その傾向が見えてきます。愛媛県今治市の調査から、中心市街地の都市環境価値を高く評価する人は参画の意識が高く、観光地など有名な場所の都市環境価値を高く評価する人は愛着が高いということが分かりました。市民に高く評価されるようなよりよい都市環境を保全し創出していくことは、シビックプライドを高めることにつながるといえます。

「俯瞰的な視点でまちを計画することとともに、そこで生きる市民にとってどんなまちであるのかを見直すことも重要」だと伊藤教授はいいます。

伊藤研究室では、まちの物的なあり方に市民感情の側面からも光を当て、その接点になるコミュニケーションについても研究を進めています。

まちは、自分たちの手の届かないところで決められてつくられるものではなく、一人ひとりがかかわって形づくられていくものです。まちで生活する人々がそのことに気付き、幸せに暮らせるまちづくりのために、伊藤研究室はシビックプライドと都市環境の関係性の研究に取り組んでいます。

理工学部 建築学科
伊藤香織教授

■ 主な研究内容

研究分野は、都市計画・建築計画。都市空間の解析及びデザイン。特に公共空間と都市生活の関わり方に着目し、国内外の都市におけるシビックプライドについても研究を行っている。

おすすめの取り組み