理工学部創設50周年にあたる2017年、分野を超えて教育・研究を推進する横断型コースが大学院に導入された。そこから続く創域理工学研究科横断型コースは、イノベーションの実現と高付加価値を持った成果を目指したコース運営を行っている。6つのコースから始まり、現在は、医理工学際連携、農理工学際連携、宇宙理工学、人間安全理工学、エネルギー・環境、防災リスク管理、デジタルトランスフォーメーション、教職の8コースがある。今後はさらに新しいコースの設置も検討されていて、時代の要請や教員の研究の変化に対応し、柔軟に形を変えていくことになるそうだ。横断型コースと比較されやすいものに6年一貫教育コースがある。これは、学部から修士までの6年間を効率的につなぐことで専門分野をより深化させる仕組みだが、この二つは二者択一ではない。6年一貫教育コースで自専攻を深く学びながら、自身の興味や進路に向けて、さらに広い分野の知識をプラスするための仕組みが横断型コースである。

農理工学際連携コースには、現在、8つの専攻から教員と学生が参加している。情報計算科学専攻、生命生物科学専攻、建築学専攻、先端化学専攻、電気電子情報工学専攻、経営システム工学専攻、機械航空宇宙工学専攻、社会基盤工学専攻である。植物や微生物などの生物機能の理解と理工学的技術を融合することで、食料、環境、資源にイノベーションを起こすことを目指している。古屋教授は言う「食料では植物の免疫力を高めて病気にかかりにくくして増産を目指す研究、環境では土壌の汚染物質を微生物を使い分解する研究、資源では植物由来の原料でさまざまな製品をつくる研究などが一例として考えられます」。古屋教授は、これまで微生物や酵素を環境保全や環境に優しい物質生産に役立てる研究に取り組んできた。「化学製品などの生産において、二酸化炭素の排出を削減するために、石油由来の資源ではなく植物由来の資源に置き換えていこうというのは世界的な流れです」。そうした社会課題への取り組みには、分野を超えた知識と技術の結集が重要となっていく。

生物・農学系の研究では、生物を使った長期間の実験が多く、他分野への視野が狭くなりがちである。一方、理工系の学生は、生物科学の最先端に触れる機会が少ない。農理工学際連携コースでは、複合的知識を身に付け、問題発見・解決能力を磨いていく。グローバル化も重視しながら、外国や産業界の多彩な講師による講義を開講。同時に、異分野の学生が積極的に討論するセミナー形式の講義を行い、ディスカッション・プレゼンテーション能力を高めている。6年一貫教育コースとも連動しながら、学士課程(学部)で広い視野を養い、修士課程では実験を含む専門的な研究に集中できる環境をつくっている。古屋教授は言う「農理工は、どこにでも広がっていく可能性のある分野だと思います。ここで多くのことに触れておくと、社会に出て新しい話が出てきたときに、拒絶することなく受け入れることができると思います。また、自身の研究を専門外の人に分かりやすく説明する能力は、間違いなく磨かれます」。こうした環境で、しなやかで多彩な視野を身に付けた人材たちが、安心して暮らせる社会を見せてくれる日は遠くない。
■ 主な研究内容