2020.06.30
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膨大なデータの分析を通して、これからの介護の形を探る

今の日本が抱えている課題のなかでも、「介護」は特に大きなものの1つです。日本は超高齢化社会が目前に迫っており、2025年には3人に1人が65歳以上になるといわれています。そのなかで、「要介護者を誰が介護するのか」「増えていく介護費用を抑えるために何をすべきか」といった問題が、一気に表面化してきているのです。

そこで、経営学部 ビジネスエコノミクス学科の菅原研究室では、日本の介護の経済分析に取り組んでいます。「社会福祉・社会保障の財源が限られている中で、誰もが幸せに暮らしていくにはどのような介護のあり方がベストなのか」を考えているのです。介護にかんするお金がどのように動いているか、どのくらい効果を上げているかなどをデータから調べることによって、施策に理論的な裏付けをすることができます。

分析に使用するのは、「介護レセプトデータ」です。介護レセプトとは、介護サービスにかんする支払い情報、つまり介護のレシート情報のことをいいます。
ただし、これらは特定の情報を調べるために「集めた」データではなく、単に「集まってしまった」だけのデータなので、この中からいかに有用なデータを取り出すかが、研究者の腕の見せ所です。菅原研究室では、「パターン認識」という機械学習の1つを利用して、意味のあるデータを取り出すことに成功しました。

データを見つめることは、現場の真実に向き合うこと

介護レセプトデータには、介護保険を利用している人の80%ほどのデータが集まっています。人数にして約500万人分のデータが120ヶ月分ほどあり、並び替えるだけでも3日はかかるほどのビッグデータです。これらのデータを取り扱うのは大変なことですが、それでも根気よく向き合うと、そこからはさまざまな真実が見えてきます。

今の制度による介護の実態を最もよく知るのは現場ですが、その現場の声は周囲に届きにくいのが実情です。だからこそ、データを分析して実態を明らかにすることで、周囲にも問題が認識され、具体的な解決へとつなげることができると菅原研究室は考えています。

介護の問題に取り組むことは、「3.すべての人に健康と福祉を」という、SDGsの世界目標とも重なるものです。今後も、介護にかんする制度やその実績を正しく評価して、政策提言につなげていきたいと考えています。

経営学部 ビジネスエコノミクス学科
菅原慎矢准教授

■ 主な研究内容

研究分野は、高齢者介護の経済分析。ヘイズ統計・機械学習などのデータサイエンスを取り入れながら、高齢化する日本の介護問題について多角的な分析を行っている。

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