地球全体の人口は激増を続けています。それに伴う飢餓と栄養不良は、世界が抱える重大な問題の 1つで、安定した食料生産システムの確立が求められています。
食料・環境・エネルギー問題の解決のために欠かせないポイントは、「植物の生き方を知ること」だと、理工学部 応用生物科学科の朽津研究室では考えます。まだまだ未解明の部分が多い、植物の生きる仕組みを解明し、「食」や「農」に応用していくことが朽津研究室のテーマです。
たとえば近年では、米の品質・収穫量の向上にかかわる「オートファジー(細胞内自食作用)」という細胞の働きの解明に取り組んでいます。
現在、地球温暖化などの環境ストレスの影響で、米の品質が低下し、収穫量が減っていることは大きな社会問題です。朽津研究室では、オートファジーの能力が欠けると稲は花粉をうまく作れず、米が実らなくなること、つまり稲の花粉や種子の形成にオートファジーが重要であることを発見しました。
このオートファジーを人為的にコントロールすることができるようになれば、米の品質・収穫量の低下に、ブレーキをかけられるかもしれないということが分かったのです。
また、植物が生きるためには、活性酸素が欠かせないことも研究によって明らかになりました。
私たち人間にとって活性酸素は、「体のサビつき」の原因として悪いイメージを持たれます。植物にとっても過剰な活性酸素は成長の妨げとなるのですが、一方で、栄養を吸収する根毛(根に生えている細かい毛のようなもの)や、受精に必要な花粉管を伸ばすことをはじめとして、体の中のさまざまな機能に活性酸素を活用していることを見出しました。
いわば諸刃の剣ともいえる活性酸素を活用する仕組みも、植物を活用するための、未来のバイオテクノロジーに大きく生かすことができるでしょう。
人間活動が地球の限界を超えつつあり、変化の大きいこの時代には、食料・環境・エネルギーの問題の重要性は増す一方と思われます。そのためには、私たちの食や環境を支えてくれる植物の生き方をより深く理解し、植物の力を有効利用する研究をますます発展させなければなりません。朽津研究室では、病気や環境ストレスに対する免疫力を高める「植物サプリ」のようなものを創り出すことを視野に入れた研究を進めています。
また、理工学部で導入している「農理工学際連携コース」では、生物系と理工系が学問の枠を超えて協力し合うことで、多面的に活躍できる人材を育て、また植物の力を生かす研究をさらに発展させようとしています。
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主な研究内容
複数個体の脳活動に注目し、
集団形成のプロセスを明らかにする。
総合研究院 パラレル脳センシング技術研究部門
創域理工学部 機械航空宇宙工学科
竹村裕教授
総合研究院 パラレル脳センシング技術研究部門
先進工学部 生命システム工学科
瀬木恵里教授
2023年04月07日