統計学は、実用性の高い学問といわれています。21世紀の今、研究やビジネスの現場では、超膨大で複雑に入り組んだデータの山=「ビッグデータ」を、有効に取り扱えるツールと人材が求められているためです。
この統計学の一分野であり、医療や医学の研究に役立てられているのが「生物統計学」です。
たとえば、新しい薬が従来の薬に比べて効果があるのか、本当に効果があるならどのくらい効くのか、といったことを示すときに、生物統計学が用いられます。生物統計家は、「どのようにデータを収集するか」「そのデータをどのように解析するか」「得られた結果をどのように解釈するか」を考え、臨床研究者と協力して課題に当たっていくのです。
単にデータをグラフにまとめるに留まらず、そのデータを正しく捉え、課題に生かしていくことが、生物統計学の目的といえます。
この生物統計学を用いて、理学部第二部 数学科の下川朝有研究室では、「患者の予後予測モデル」を構築する研究を行っています。
予後予測とは、現在持病を抱えている人に対して、今後の病状はどうなるか、いつまで生存できるかといった「見通し」を立てることです。
たとえば、がん患者の性別・年齢、腫瘍の大きさ、MRIやCTスキャンによる画像情報といった、膨大なデータを解析することで、再発・生存の確率の変化を表すモデルを構築することができます。
同じがんでも、どのような状況だと再発率が高いのか、あるいは長く生存できるのかといったモデルが確立されれば、より的確な治療方針を立てることができるようになります。
人々の健康を守り、命を救うためには、精度の高い予防と治療が必要です。これらを確立させる土台を作ることが、生物統計学の役割といえます。
今、世界で急がれている「安全で効果的なワクチンと医薬品を全ての人が利用できるようにする」という課題に対しても、安全性や品質を審査するツールとして、生物統計学を役立てていくことが目標です。
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主な研究内容
総合研究院 ウォーターフロンティア研究センター
工学部 機械工学科
元祐昌廣教授
総合研究院 ウォーターフロンティア研究センター
創域理工学部 先端化学科
酒井健一准教授
2023年04月07日