2020.06.24
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身の回りの小さなエネルギーを集めて、有効活用する技術

太陽光や風力が、発電に使われているのはよく知られている通りです。一方、室内光や熱、振動、電磁波、人間の体温や動きなども、エネルギー発電に利用できるのをご存知ですか?
こうした周囲の環境から、少しずつエネルギーを集めて電気に変換する技術のことを、「エネルギーハーベスト」といいます。

エネルギーハーベストのメリットは、配線や電池いらずで電気を利用できることです。
たとえば、小型電池で動いているセンサーやスマートフォン、ウェアラブル端末などに応用すれば、充電や交換の必要なく、自立した電源で半永久的に動いてくれるようになります。
また、さまざまなものからエネルギーを集められるので、太陽電池が使えないトンネル・橋といったインフラの内部、海中、宇宙などでも、電気設備を利用することができます。
将来的には、24時間作動が要求されるセキュリティシステムや医療・介護業界での活用、また電気の消費量を抑える効果も期待されている技術です。
理学部第一部 応用物理学科の中嶋研究室では、このエネルギーハーベストを活用するため、さまざまな研究を行っています。

IoT時代のセンサー技術に、エネルギーハーベストは必須

将来的には数兆個ものセンサーで埋め尽くされたセンサーネットワーク社会が形成されると期待されています。中嶋研究室では、振動から電気を取り出す圧電材料や熱から電気を取り出す熱電材料を新たに開発しています。特に、高分子やナノカーボン研究材料といった柔らかさを特徴とした材料に注目して、曲げたり、身に付けたり、大面積に作ったりすることのできるエネルギーハーベスティングの実現を目指しています。まだまだ、発電量は小さいですが、理論物理やメカトロニクス、エレクトロニクスの分野とも連携しながら、センサー情報を伝送する距離や通信量をさらに向上させていくことが目標です。

エネルギーハーベストは、モノを通信ネットワークで繋ぐ「IoT(Internet of Things)」の広がりによって、ますます需要が高まると見られています。たくさんのセンサーの電源をエネルギーハーベストでまかなえば、常に安定したセンサーネットワークを確立させることができるでしょう。
今後は、災害が起きても復旧しやすい設備やインフラ、持続可能なクリーンエネルギーへのシフトといった、持続可能な社会作りにもエネルギーハーベストを役立てていきます。

理学部第一部 応用物理学科
中嶋宇史准教授

■ 主な研究内容

研究分野は、ソフトマテリアルの機能物性。物質の持つ「機能」に着目し、その機能を応用した新しい情報・エネルギーデバイスの創成を目指している。

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