2019.10.30
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豊かな資源を使った夢の電池への挑戦

今、私たちの暮らしになくてはならないスマートフォンやモバイルPC。それらに必ず搭載されているのが、「リチウムイオン蓄電池」です。環境を考慮した電気自動車や風力・太陽光発電などの自然エネルギーを安定的に利用するためには、さらに大型の「リチウムイオン蓄電池」が必要になってきます。

しかし、原材料のリチウムやコバルトなどのレアメタルは、地球の希少資源。しかも、日本ではすべてのリチウム資源を輸入に頼っているため、将来的に原材料の確保に不安があるといわれています。

理科大では、リチウムの代わりに資源豊かなナトリウムを使った次世代の新しい蓄電池「ナトリウムイオン電池」の開発に挑戦してきました。ナトリウムは海水のほか、岩塩からも産出される豊富な資源です。

「ナトリウムイオン電池」の研究をいち早く始めたのは、理学部第一部 応用化学科の駒場研究室。研究をスタートした頃はリチウム電池研究の全盛期で、「リチウム以外の材料で電池を作るのはナンセンスだ」と考えられていました。しかし、駒場研究室は持続可能な資源の必要性を感じ、リチウムに代わる材料の研究を開始。
試行錯誤を重ねて難題を解決し、辿り着いたのが「ナトリウム」でした。

ナトリウムと鉄は電極として相性がよい上に資源不足の不安はないので、「高性能ナトリウムイオン電池」実現に向けて研究を続けました。
2009年「ナトリウムイオン電池に用いる炭素材料の改良を重ねれば、安定的な充放電が可能になる」ことを世界に先駆けて発表。2014年にはカリフォルニア工科大学レズニック研究所が主催する、未来のエネルギー社会に貢献する研究を表彰する賞「RESONATE AWARD」を、2015年には日本学術振興会賞を受賞しました。

持続可能な近代的エネルギーの創造を目指して

駒場研究室は、数々の技術課題に対し地道な努力を積み重ね、電池研究で世界をリードする先駆的な研究成果を挙げています。

「ナトリウムイオン電池」だけでなく、「カリウムイオン電池」で世界初の作動に成功し、レアメタルを一切使わない次世代の蓄電池の実現に向け、現在も世界をリードし続ける存在です。

学部・修士・博士課程の学生たちのほか、国内外の大学や企業との共同研究を推進する駒場研究室。持続可能な社会を実現するエネルギー技術の創出に向け、時には異分野の研究室とも連携しながら、質の高い研究に取り組んでいます。

理学部第一部 応用化学科 
駒場慎一教授

■ 主な研究内容

研究分野は、電気化学、材料化学。次世代電池の材料に関する研究に取り組んでいる。

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