2020.06.18
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農薬を極力使わない有機農業で、貧困地域の農業の生産性を上げる

世界では、9人に1人が飢餓に苦しんでいることをご存知でしょうか?生命を維持するだけではなく、健康で社会的な活動を行えるよう、世界各国で飢餓を克服するための研究が行われています。

研究のひとつとして、先進工学部 生命システム工学科の有村研究室は、「病害虫による農作物への被害の軽減」に取り組んでいます。
私たちが普段食べている農作物は、病害虫の被害を多く受けています。特に農薬の購入が難しい地域では、その被害は顕著といえるでしょう。農作物の被害を軽減することは飢餓問題、食料問題を緩和することにも繋がるはずです。
そこで、有村研究室は「農薬を使わずに害虫を避ける農業」を提案します。

植物がコミュニケーション?虫を避ける植物の仕組みを農業に活かす試み

「農薬を使わずに害虫を避ける農業」のカギとなるのは、「ミント」です。
多くの植物は、虫に葉を食べられると虫への防御策を取ります。ミントも同様で、虫に葉を食べられると強烈な香りを放ち、虫を追い払おうとします。

「面白いのはミントの香りを嗅いだ周りの植物も、それぞれ虫から自分の身を守ろうと反応すること」と語るのは有村教授。
虫に食べられて初めて虫への防御策を取る植物たちが、ミントの香りを嗅ぐと、自分が食べられたわけでもないのに、一斉に防御策を取り始めるというのです。
実験の結果、この自衛策のおかげで、葉の虫食いは激減。結果、農薬の使用量は半減しました。

「私たち研究者は、これを“立ち聞き”と呼んでいます。食べられた植物やミントが“虫だ”と発した言葉を周りの植物が立ち聞きしているようでしょう?」と有村教授。コミュニケーションを取るとき、人間である私たちは言葉を使いますが、植物は香りを使っているのかもしれません。

「2.飢餓をゼロに」では、食事の質を問う取り組みも重要です。環境負荷の少ない有機農業は、多様な栄養素を豊富に含むヘルシーな農作物にも繋がっていくでしょう。

先進工学部 生命システム工学科 
有村源一郎教授

■ 主な研究内容

研究分野は遺伝子工学、エコロジー、生理学。植物の香りを介した生物間相互作用ネットワークの解明とアグリバイオにおける応用について研究をしている。

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