2019.12.26
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財政赤字に対する市民の認知と態度の関係性を解析する

わたしたちの社会に存在する不平等のひとつとして、世代間格差が挙げられます。
この世代間格差は、途上国だけでなく、多くの先進国にとっても重要課題です。なぜならば、世界の国々のほとんどが、世代間格差のひとつの原因である財政赤字を抱えているからです。

政府の財政運営は国民の受益と負担を伴うものですが、財政赤字は将来世代に負担を先送りするという意味で、世代間格差を引き起こし得る問題です。つまり、財政再建は、日本を含む多くの国々にとって、世代間不平等を是正する重要課題となっているのです。

長年、政府の財政赤字を巡る研究では、市民は増税に反対し歳出拡大を要求し財政赤字に関心をあまり寄せないと暗黙理に仮定し、政府の財政赤字はそういった市民から支持を得ようと政治家が努力することにより生じると議論してきました。

しかし、市民の中で財政再建への合意を醸成することは不可能なのでしょうか?近年、いくつかの先進民主主義国では市民が政府の財政再建努力を評価していることが確認されています。このような潮流を踏まえて、理学部第一部 教養学科松本研究室は他機関との共同研究により、オンライン調査実験を実施し、政府の財政赤字に対する市民の認知と態度の関係性を解析しています。

データ解析を通じて、学生が政治を理解する

政府の財政赤字の解消には、ほかのSDGs問題と同様、政策担当者以外の人々が問題を共有し積極的に取り組むことが不可欠です。したがって、理科大の授業においては、単に問題の所在や研究動向を紹介するだけではなく、財政赤字の克服案を学生自身に提案してもらいます。

政府の実際の予算案を横に置いて、自分たちで予算案を構想してもらい、その予算案に基づくとプライマリーバランスを黒字化するのに何年かかり、そして累積赤字を帳消しにするのに何年かかるのか、シミュレーションを行ってもらうのです。

もちろん、多くの学生は容易に克服できない政府の財政赤字状況に驚きます。しかしこの演習の目的は、人々が無関心になりがちな財政赤字という問題に関心を持つこと。そして、財政赤字という解決困難に見える問題は、時間がかかるものの、自分たちの手で克服可能な課題であることを知ることにあるのです。

不平等を解消していくことは容易ではありません。
この問題の解決には、市民が不平等に対する理解を深めることが必須です。データ解析を通じて市民の不平等への認知と態度を明らかにすることで、不平等の是正に取りくむ政策担当者と市民の間を繋ぐ学問的挑戦が行われています。

教養教育研究院 神楽坂キャンパス教養部 
松本朋子講師

■ 主な研究内容

研究分野は政治学(実証政治学・実験政治学・政治行動論・政治史)。
持続可能な成熟国家への進化を目指し、世論調査実験や計量データ分析を用いて、人々の財政や選挙に対する認識を研究している。

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