2024.03.28
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クリエイティブな工学者であるためにかかせない授業。

先進工学部の中で重要な意味合いを持つ授業。それが『デザイン思考入門』である。学部のある葛飾キャンパスは、新しい価値の創造を目指すイノベーションキャンパスと位置づけられており、そのための課題発見力や解決力の基礎となる授業として、先進工学部の全学科1年次の必修授業となっている。渡邊教授は言う「デザイン思考とは、デザイナーと呼ばれる人たちがモノやサービスを生み出すときに行っているプロセスを、ビジネスや研究の場でも使えるように整理してフレームワーク化した大きな意味でのメソッドです」。モノをつくる上でも、科学技術を生み出す上でも、新しい価値を創造するためにはデザインが重要というわけだ。「理科大の学生はデザイナーになるのではなく、理系の研究者とか、企業などで開発担当などをすることが多いと思います。そうしたときに、研究や開発をイノベーティブな方向に持っていけるようになればいいと思っています」と渡邊教授。工学者にとってクリエイティブな能力は、今後ますます重要になっていくということだろう。

チームで100以上のアイデアを出し課題解決を具体化。

今年度の授業のテーマは、『先進工学部の学生が使うスペシャルなノートを考える』というものである。それを題材として文具メーカーの商品開発を疑似体験するのである。チームで協力しながら短い時間内に100を超えるアイデアを出し、プロトタイプを紙でつくり、プレゼンテーションによって評価されるところまでを行う。チームでたくさんのアイデアを出すことで、違ったものの見方に触れることができる。その面白さ、可能性に気がついて、学科単位ではなく5学科合同の授業にしてほしいと言ってきた学生もいたという。しかし、実際に提案されてくるアイデアは無難なところに落ち着く傾向があるらしい。「飛躍したアイデアをカタチにするのは難しいものです。上級生になって技術のトレーニングができたときには、面白いアイデアをカタチにできるようになっているはずです」と渡邊教授。この授業が、本当の意味で花開くには、もうしばらく熟成の時間が必要なようだ。

医療におけるコミュニケーションを変えてきた手法。

渡邊教授がこれまで手掛けてきた医療コミュニケーションの研究には、まさにデザイン思考が生かされてきた。「医工連携のワークショップで、医療現場の課題について聞いていたときに、デザインで改善できることがあると感じました」と渡邊教授。そうしてできたものの一つに、患者面談用インフォアニメディアがある。大腸がんの患者に医者が腹腔鏡手術の説明をするときに使うものだが、以前は手でイラストを描きながら40分ほどかけて説明していたのが、詳細でしかも分かりやすいアニメにすることで数分程度に短縮できたという。これは単に便利なモノをつくるという以上に、これまでの課題を新しい視点で解決し、物事の仕組みを変えるという価値の創造につながっている。渡邊教授は言う「理科大は学部や学科ごとに高い技術を持っています。そこにうまく横串が通っていき、さらにデザイン思考が効いてくれば、たくさんのイノベーションが起こってくると思います」。

先進工学部 機能デザイン工学科
渡邊敏之 教授

■ 主な研究内容

専門分野は、デザイン学。医療コミュニケーションデザインなどを通して、 医療現場のさまざまな課題を発見し、新たな視座で解決する方法、技術、考え方について研究。

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