2024.03.28
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薬の効く仕組み、作用機序を理解する薬理学。

薬理学とは、薬が生体反応を引き起こすまでに、どのような機序(仕組み)を介して発現しているのかを学ぶ学問である。その薬が何に効くのかという理解はもちろん重要だが、薬学部においては、どのような仕組みで効いているのかを理解することはさらに重要となる。斎藤教授は言う「薬は薬理作用を理解することで発展してきました。つまり、歴史を辿ってみると、なぜかわからないが効いてしまったということで使われるようになった薬が多いのです。そこから、どうして効くのかということを研究することで、薬理作用という学問ができ上がっていきました」。理科大の薬学部の学生は、将来、薬剤師になる人と創薬の道に進む人が多い。薬剤師が患者さんに、どうしてこの薬が処方されたのか、どうして効くのか、それを説明するための知識が薬理作用である。また、創薬においても、もっと効く薬、同じように効いて副作用が少ない薬など、開発を進める上での基本となる。

生体システムや病態の理解へと広がっていく学び。

薬理学は、どういう仕組みで薬が効いているのかにとどまらず、人体の理解、病態の理解が複雑に絡み合い、広がっていく。斎藤教授は言う「薬には主作用と副作用があります。副作用をどうやって説明するのかというところから、また新しい作用機序を考えることが必要になります。つまり、一つの薬理作用で完結するのではなく、例えば脳や神経の仕組み、さらには病気そのものが分からないと、主作用も副作用も理解できないということになります 」。薬理学は薬学部の根幹を成す学問の一つであるが、入口に過ぎないと斎藤教授は言う。「作用機序というのは今ある薬のことです。私たちが本当にやりたいのは、そこを入口として新しい薬を生み出すということです。そのためには、主作用と副作用、そして薬が効く仕組みと効かない仕組みも理解する必要があります。さらには生命のシステムや病態の理解も全部できてはじめて、もっといい薬をつくることができるはずです」。

向精神薬など、新薬開発へつながる期待。

斎藤教授が専門としているのは、精神薬理学であり、向精神薬の開発である。精神疾患には、認知症、双極症、統合失調症などさまざまな病気があり、心の病気と思われがちだが、脳の形態や機能異常を示す証拠が見つかりつつあり、脳の病気として薬物治療が始まっている。そうした治療を可能にしたのは、脳の機能、脳の病態生理を明らかにすることで、人と薬の間を橋渡しする薬理学である。斎藤教授は言う「薬物治療は始まっていますが、治っている人はまだ少ないと思います。循環器系などの病気は、薬である程度コントロールできるようになってきましたが、それと比べると精神疾患はまだまだ始まったばかりです」。そうした現状を知ることで、向精神薬の開発を志す学生は少なくないという。それは裏を返せば、高齢化社会、高ストレス社会といわれる現代の日本の中で、精神の病気に苦しむ人を間近で見ることが増えているということだろう。薬理学の重要性は、ますます高まっている。

薬学部 薬学科
斎藤顕宜 教授

■ 主な研究内容

専門分野は、精神神経薬理学。抗うつ薬、抗不安薬などの向精神薬や認知症治療薬を研究。現在、オピオイド受容体をターゲットとした新規向精神薬の創薬開発に取り組んでいる。

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